病院坂の首縊りの家 (映画)

映画『病院坂の首縊りの家』

『病院坂の首縊りの家』は、1979年5月26日に公開された日本の映画で、横溝正史の同名長編推理小説を基に製作されました。映画は東宝が製作し、配給も東宝が担当しました。監督を務めたのは市川崑で、主演の金田一耕助を演じたのは石坂浩二です。この作品はカラーで撮影され、スタンダードサイズで公開されました。

映画の背景と制作

この映画は市川・石坂のコンビによるシリーズの第5作であり、リメイク作品である『犬神家の一族』（2006年）を除いては最後の作品となります。原作小説は東京・高輪を舞台としていますが、映画では奈良県吉野に設定が移され、物語の進行も大きく変更されました。原作では一時迷宮入りするような展開もなく、事件から解決までの流れがスムーズになっています。また、登場する犯罪者たちの設定も原作とは異なる部分が多く、製作決定時には「病院坂」のロケ地を広く募集した結果、岡本町の住宅地の坂道が選ばれました。吉野を描いた場面も、実際には伊賀・上野の車坂周辺で撮影が行われました。

主なキャストとその役割

この作品には多くの著名な俳優が出演しています。石坂浩二は金田一耕助役を演じ、以降のシリーズでも欠かせないキャラクターとなりました。ヒロインの役には桜田淳子が起用され、彼女は6年のキャリアを経て本作で見事な演技を披露しました。市川崑監督が制作から一時的に外れ、石坂が監督を務める予定だったが、企画の要請により結局は市川が監督を続投することとなった経緯もあります。

ストーリー概要

物語は、名探偵金田一耕助が吉野市にある先生の元を訪れるシーンから始まります。しばらく旅に出ることを告白した金田一は、先生が勧める写真館に向かいます。しかし、そこで出会った写真館の主人である本條徳兵衛から、命の危険を直感し調査を依頼されます。金田一はその日のうちに不思議な女性（桜田淳子）と出会い、彼女から「結婚写真を撮りたいので夜に来てほしい」と言われます。

その夜、金田一は女性が指定した「病院坂」と呼ばれる空き家に向かうことになります。しかし、その場所で悲劇的な事件が起こり、写真館の若主人が男の生首を見つけるという衝撃的な展開に発展します。警察は捜査本部を設け、事件の解決に向けて動き出しますが、次々と不可解な殺人が続く中で金田一も巻き込まれていきます。

原作との相違点

映画は原作の要素を強く反映しているものの、独自の展開が盛り込まれています。特に、原作の複雑な家系図を引き合いに、登場人物の背景や事件の動機には新たな解釈が加えられています。金田一が最初から海外に渡ることを考えている点や特定のキャラクター間の関係性が初めから変わっていた点など、細かい部分での変更が多く見受けられます。

ラストシーンは、作家横溝正史自身が客演し、金田一が再び登場する形で終わるなど、自己言及的な要素も含まれています。作品は、単なるサスペンス映画ではなく、視聴者に複雑な人間関係と悩みを再考させるように構成されており、横溝正史の集大成ともいえる内容に仕上がっています。

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