白樺文書 (ルーシ)

白樺文書の歴史とその意義

本稿では、11世紀から15世紀にかけてのルーシ（東スラヴ語圏）において使用された樺皮文書について詳述します。樺皮は様々な地域で筆記材料として利用されており、ルーシの文書は特に白樺文書と呼ばれています。2022年8月時点での発見数は、ロシアのノヴゴロドで1154枚、他の地域でも100枚以上にのぼります。これらの文書は、当時の人々の私信や日常生活を反映した貴重な歴史的資料となっています。

1. 白樺文書の特性

白樺文書は、11世紀の初めから使用され始め、15世紀半ばには紙の普及によって姿を消しました。記載のためには、樺皮の内皮や外皮を剥がす加工が施され、その後ピサロと呼ばれる筆記用具で文字が刻まれました。記述にはキリル文字が用いられ、語間に空白はありません。樺皮文書の大多数は、私信として日常生活の一端を垣間見ることができます。

2. 樺皮と他の筆記材料

同時代には羊皮紙も使用されていましたが、樺皮はより安価で、日常的な用途や商取引の記録、さらには羊皮紙に記すための下書きとして用いられました。債務の回収や商業記録の例が数多く残されており、これらの文書は当時の社会や経済状況を理解する手助けとなります。

3. ノヴゴロドの優位性

白樺文書は特にノヴゴロドから出土したものが多いです。その理由は、特有の地理的環境から文書が保存されやすかったためです。ノヴゴロドは商業都市として栄え、漢字同盟と条約を結んでいたことも影響しています。しかし、15世紀以降のノヴゴロドの衰退に伴い、白樺文書の発見数は減少しました。

4. 文字の年代測定と発掘沿革

白樺文書の年代を測定する方法として、年輪年代学が用いられています。また、文書中には歴史的人物や出来事に言及されているものもあり、他の年代記との関連もあり、非常に貴重な資料です。1940年代後半の発掘から始まり、1951年には最初の文書が発見され、それ以降も数多くの文書が出土しました。特にノヴゴロドでは、近年でも新たな文書が発見され続けています。

5. 記述の内容

白樺文書のほとんどは個人的な手紙であり、女性が書き手である場合もあります。内容は家族に関するものが多く、商業的な記録も含まれています。また、公的文書の下書きや、キリスト教関連の文書、さらには教育用の練習文書も確認されています。たとえば、ある手紙では母が息子に服を買ってくるよう依頼する内容があり、別の文書では女性が結婚を申し込む内容が記載されています。

6. 歴史的および言語学的意義

白樺文書は歴史学、考古学、言語学のさまざまな分野での研究に活用されています。特に、古ノヴゴロド方言や日常生活における言語の変遷を探る重要な資料として位置付けられています。また、文書中に見られる独自の語彙や表現は、当時の人々の生活や文化を理解するうえで欠かせない要素となっています。

まとめ

このように、白樺文書は中世ルーシ社会の生活、経済、文化を知るための重要な手がかりです。その発見は、我々が当時の人々の考えや懸念を理解するうえで、多大な助けとなります。今後の発掘と研究により、さらなる知見が得られることが期待されます。

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