白水会

白水会：住友グループを結束させる非公式の経営執行委員会

白水会は、住友グループの中核企業社長によって構成される、独特な社長会です。戦後の経済環境変化に対応し、グループ企業間の連携強化、情報共有、そして新規事業への共同進出などを目的として設立されました。単なる連絡機関ではなく、グループ全体の戦略を協議する場、いわば非公式の経営執行委員会としての役割を担っています。

戦後のグループ結束：白水会の設立背景

戦前の住友財閥は、本社による強力な統制体制を敷いていました。しかし、戦後は解体され、新たな経済環境の中でグループの結束を保つ必要に迫られました。白水会は、この状況下で、住友グループの結束を強め、競争力を維持するための重要な役割を果たすことになります。

住友グループが他財閥に先駆けて社長会による集団指導体制を確立できた要因としては、銅山経営を基盤とした多角化による企業間の強固な関係、グループ内における派閥の不在、そして銀行・信託・生命保険といった強力な金融機関の存在などが挙げられます。これは、他財閥と比べ、住友グループがよりまとまっていたことを示しています。

厳格な参加条件と住友家との繋がり

白水会への参加には、厳しい条件が課せられました。現役社長のみが参加を認められ、代理出席は不可でした。また、住友家への忠誠心と住友精神の順守が求められ、いわば「血判状」とも言える書類への押印が必須でした。

さらに、新規加盟の社長は、住友家家長から「文殊院旨意書」のレプリカを受け取るなど、住友家との深い繋がりを示す儀式が執り行われていました。春の祠堂祭や秋の御招宴への出席も義務づけられており、住友家との定期的な交流を通じて、グループ全体の結束を維持することに貢献しています。出席率の高さと積極的な活動は、白水会の強い統制力と住友家への強い忠誠心を反映しています。

会議内容は厳重に非公開とされ、議決は満場一致、幹事の持ち回り制など、独特の運営ルールが設けられていました。このことは、グループ全体の意思統一を重視する姿勢を表しています。

白水会の活動範囲と影響力

初期の協議事項は、寄付金や病院、厚生施設など形式的なものが中心でしたが、次第に新規事業の計画、系列企業対策、商標、社章など、グループ全体に関わる重要な問題が取り上げられるようになりました。ただし、各企業の最高人事や直接的な統制は白水会の権限外でした。それでも、住友グループに大きな影響を与える問題については、白水会が最高意思決定機関としての役割を果たしており、「非公式の経営執行委員会」と呼ばれる所以となっています。

関連組織と会員企業の変遷

白水会以外にも、社長OB会である「白泉会」、副社長・専務クラスの会合「五日会」が存在し、白水会を支える役割を担っていました。「五日会」は、白水会に提出する議題の調査・企画などを担当していました。

会員企業は、当初は住友直系の12社でしたが、その後、準直系の企業や分離した企業などが加わり、規模を拡大していきました。しかし、住友金属工業が新日鐵住金（現日本製鉄）との合併によりグループから離脱した事例もあり、会員企業の変遷も白水会の歴史を語る上で重要な要素となっています。2016年には大日本住友製薬と住友ゴムが新たに加盟するなど、現在もその活動は続いています。

幹事の持ち回り制は、特定企業への権力集中を防ぎ、グループ全体の均衡を保つための工夫と言えるでしょう。特に、別子事業から派生した新居浜4社（住友化学、住友重機械工業、住友林業、住友金属鉱山）は、現在も強い影響力を持っています。

まとめ

白水会は、戦後の混乱期に設立され、住友グループの結束と発展に貢献してきた独特な社長会です。住友家との深い繋がり、厳格な運営ルール、そして会員企業の変遷など、その歴史と役割は、日本の企業グループの歴史を考える上で貴重な事例となっています。 その存在は、住友グループの結束の強さと、住友家の影響力の大きさを示す象徴的な存在と言えるでしょう。

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