白沙 (特設測量艦)

特設測量艦白沙：日中戦争から太平洋戦争終戦へ

白沙は、日本海軍が運用した特設測量艦です。元々は中国の税関監視船「福星」として活躍していましたが、日中戦争中に日本海軍によって鹵獲されました。その後、横須賀海軍工廠で徹底的な改装を行い、日本海軍最大の測量艦として生まれ変わりました。約7000トンの排水量を誇り、九〇式測深儀をはじめとする充実した測量機器を搭載、中国中南部沿岸の測量に大きく貢献しました。

艦歴：税関監視船から測量艦、そして終焉へ

白沙の起源は、1914年にイギリスの造船所で建造された船舶です。その後、中国に渡り、税関監視船「福星」として密輸取り締まりに従事しました。当時から高速艇を搭載しており、その搭載設備は改装後も測量艇の搭載に役立てられました。

日中戦争中の鹵獲後、特設測量艦として生まれ変わった白沙は、正規艦船ではなく臨時の特設艦船として扱われました。これは、日中戦争後の帰属が未定であったためです。それでも、充実した測量設備と大型の船体により、特設測量艦「第三十六共同丸」と共に、中国沿岸の海図作成に貢献しました。

太平洋戦争末期の1944年5月、白沙は特設工作艦に類別変更され、シンガポールで再び大規模な改装工事を経ました。翌年には特設運送船に転籍したものの、1945年6月8日、インドシナ半島沖でアメリカ海軍潜水艦「コビア」の雷撃を受け、沈没しました。

白沙の搭載艇：高速艇の鹵獲と技術的貢献

白沙（当時の「福星」）には、45フィート級の高速艇が複数搭載されていました。日本海軍に鹵獲された白沙と同様に、搭載艇の一部も鹵獲され、その性能は日本海軍関係者に大きな感銘を与えました。

特に「関維」と「関福」の2隻は、横須賀鎮守府で詳細な研究が行われ、その高速性能は、日本海軍の魚雷艇開発に貴重なデータを提供しました。研究後、これら2隻は「公称第1005号」と「公称第1006号」と命名され、魚雷戦闘訓練の支援に用いられました。

白沙の特務艦長

白沙の特務艦長を務めたのは、以下の面々です。彼らの指揮の下、白沙は測量活動や、その後は戦争遂行に貢献しました。

近藤為次郎 中佐：1938年2月10日 - 1938年11月15日
今村幸彦 中佐：1938年11月15日 - 1939年11月15日
古賀善吾 大佐：1939年11月15日 - 1940年10月15日
古木百蔵 大佐：1940年10月15日 - 1941年7月31日
* 高橋棐 大佐：1941年7月31日 -

まとめ：特設艦船としての役割と歴史的意義

白沙は、特設艦船として、その短い艦歴の中で測量、工作、輸送と複数の役割を担いました。元は中国の税関監視船であった船舶が、日本海軍によって改修され、測量艦として活躍し、最終的には米潜水艦の攻撃によって沈没したという歴史は、太平洋戦争下の特設艦船の運命を象徴する出来事と言えるでしょう。また、搭載艇の鹵獲と技術研究は、日本海軍の技術開発にも貢献しました。その歴史的意義は、単なる一隻の艦船の物語を超え、日中戦争と太平洋戦争を背景とした複雑な国際関係、そして軍事技術発展の一端を垣間見せてくれます。

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