特設艦船

特設艦船とは

特設艦船（とくせつかんせん）とは、民間で運航されている船を徴用し、海軍の艦艇として改装したもので、主に戦時中に使用される艦艇を指します。これは近代の海軍において、艦艇が専門化・特殊化される中で生まれた概念であり、民間船と軍艦の役割を融合させる工夫のひとつです。

特設艦船の背景

近代以前では、軍艦と民間船の間に大きな構造的な違いがなく、危機的状況では民間船を武装して軍艦として扱うことが一般的でした。しかし、近代の海軍では艦艇の設計が特化・専門化され、民間船をそのまま戦闘に使うことが難しくなりました。そのため、有事に迅速に艦艇が求められる場合には、既存の民間の商船や漁船を徴用し、改造して特設艦船を構築する道を選びます。

このような特設艦船は、基盤となる民間船の多様性によって種類や大きさが多岐に亘りますが、新たに戦闘艦を建造するよりも低コストで短期間で準備できるという利点があります。さらに、既存の船員をそのまま徴用して乗組員にできる点も大きなメリットです。一方で、武装や防御力においては正規の戦艦に比べて劣るため、その使用には工夫とリスクが伴います。

特設艦船の運用と指揮

特設艦船は海軍の士官が指揮することが多く、国際法上でも軍艦として認識されますが、全ての乗員が軍人であるわけではありません。多くの場合、民間船の船員も徴用されるため、優秀な船員は士官待遇の軍属として扱われますが、その一方で一般の船員はあくまで軍属とは言えない位置付けであることもあります。

日本海軍の特設艦船

日露戦争

日露戦争時には、明治37年に海軍大臣が30隻以上の汽船を徴用し、艤装して戦闘用途に供しました。それらの艦船は「仮装[[巡洋艦]]」や「水雷母艦」として分類され、用途によって細かく区分されました。

昭和前期

昭和前期には、日本海軍は特設艦艇の助成制度を利用して民間の優秀船舶を改装し、軍艦としての機能を持たせる努力を重ねました。これにより、さまざまな艦種にわたる特設艦船が海軍に補填されました。

特設艦船の種類

特設艦船は、艦の特性や大きさに応じて多種多様な艦種に分類されました。特徴的なものには特設巡洋艦、特設航空母艦、特設水上機母艦などがあります。これらは最前線での任務に従事するために設計され、海軍の戦力を補っていました。

特設巡洋艦

また、大型貨客船を基にして砲を装設した特設巡洋艦は、洋上での監視活動や船団の護衛に用いられました。特設航空母艦は、貨客船を改装し航空機を発艦するための施設を整えたもので、最終的には正規の航空母艦に組み込まれる例も見られました。

特設監視艇

特に太平洋戦争中は監視艇として多くの漁船が徴用され、海軍艦艇として運用されました。これらの艇は外洋での哨戒を担い、敵遭遇時には重要な情報を提供しましたが、その武装は限られていたため多くの艇が戦闘で損失しました。

徴用船の現状とイギリスの特設艦船

日本海軍が徴用した船舶数は1373隻に及び、835隻が戦闘によって失われたとされています。イギリス[[海軍]]でも、第一次・第二次世界大戦時に多くの民間船を徴用し、特設艦船として整備し利用した例があります。これにより、海軍の戦力を維持し続ける努力がなされました。

結論

特設艦船は、民間船を有効活用することで海軍の戦力を補強する工夫の一つであり、戦時中の戦略的選択肢の一環でした。海軍の特殊なニーズに応じて作られた特設艦船は、それぞれの時代背景に深く根ざしています。

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