白沢宿

白沢宿：奥州街道の面影を今に伝える宿場町

白沢宿は、栃木県宇都宮市の北東部に位置する、かつて奥州街道（奥州道中）の宿場町として栄えた歴史ある集落です。江戸時代、奥州街道は重要な交通路として機能しており、白沢宿はその街道の要所として賑わいを見せていました。宇都宮宿から30里余りの場所に位置し、多くの旅人が行き交った様子が想像できます。

天保期の宿場町の姿

天保14年（1843年）の『奥州道中宿村大概帳』によると、白沢宿には家数71軒、人口369人が暮らしていました。本陣1軒、脇本陣1軒、旅籠13軒が営業し、旅人の宿泊や休憩の拠点として重要な役割を担っていました。宇加地家が本陣、福田家が脇本陣を務めていたことが記録に残されています。

白沢宿の名物として、鬼怒川の鮎と白沢の牛蒡（ごぼう）が知られていました。特に、稚児ヶ坂の中程にあった茶屋では、四季を通じて牛蒡汁が振る舞われていたと伝えられています。この牛蒡汁は、旅人にとって貴重な栄養補給の機会を与えていたことでしょう。

歴史と信仰の跡

白沢宿周辺には、歴史と信仰を感じさせる史跡が点在しています。宇都宮宿から白沢街道を歩くと、まず稚児ヶ坂を越えます。坂を登り切った宝木台地の北東端には白沢地蔵堂があり、鎌倉時代に源頼朝一族の伊沢家景が、病死した息子の亡骸を葬って祀ったのが始まりと伝えられています。

薬研坂を下った宿内には村社である白髭神社が鎮座します。白髪神社とも呼ばれ、白沢宿の名前の由来ともいわれますが、詳細は不明です。宿の北端には、宇加地家墓所に併設する薬師堂があります。

奥州道中は薬師堂の辻口で右折し、九郷半川と西鬼怒川を渡って白沢の一里塚に至ります。江戸から30番目の一里塚は、かつて鬼怒川の河原にありましたが、度重なる水害で消滅し、現在は記念碑が建てられています。

江戸時代の面影を残す宿場町

現在、白沢宿は国道4号から外れており、静かな佇まいを保っています。旧奥州街道沿道には、鬼怒川から取水された用水路が流れ、水車小屋や屋号を掲げた民家が立ち並び、江戸時代の風情をしのばせます。

かつての賑わいこそ失われたものの、白沢宿は歴史と自然が調和した、静かで落ち着いた雰囲気の場所として、訪れる人の心を癒やします。歴史好きだけでなく、静かな自然の中でゆったりと過ごしたい方にもおすすめです。周辺には、白髭神社、須賀神社、北野神社などの寺社仏閣も点在し、歴史散策の拠点としても最適です。奥州街道の歴史を肌で感じ、当時の様子を想像しながら、歩いてみるのも良いでしょう。

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