白癬

白癬（はくせん）とは

白癬は、皮膚糸状菌という真菌によって引き起こされる皮膚感染症の総称です。一般的には「水虫」や「たむし」として知られています。原因となる菌は、主にトリコフィトン属（白癬菌属）に属するものが多く、感染部位や菌の種類によって様々な症状が現れます。

原因菌の種類

白癬の原因となる菌は多岐にわたりますが、代表的なものとして以下のものがあります。

Trichophyton rubrum (トリコフィトン・ルブルム)
Trichophyton mentagrophytes (トリコフィトン・メンタグロフィテス)
Trichophyton tonsurans (トリコフィトン・トンズランス)
Microsporum canis (ミクロスポルム・カニス)
Microsporum gypseum (ミクロスポルム・ギプセウム)
Trichophyton verrucosum (トリコフィトン・ベルコーサム)

Trichophyton rubrum と Trichophyton mentagrophytes は、一般的な白癬感染症の主な原因菌です。

Trichophyton tonsurans は、特に10代の柔道やレスリング選手の間で流行しており、接触感染によって広がります。

Microsporum canis は、猫に寄生していることが多いため、子供や猫の飼育者への感染が多く報告されています。

Microsporum gypseum は、土壌に生息しており、土いじりを好む子供に感染しやすい傾向があります。

Trichophyton verrucosum は、牛などに寄生しているため、畜産業に従事する人に感染するリスクがあります。

白癬の病型

白癬は、感染部位によって様々な病型に分類されます。

体部白癬（たむし）: 股、手足、頭部以外の部位に発生する白癬。Trichophyton rubrum が最も一般的な原因菌です。
股部白癬（いんきんたむし）: 股に発生する白癬。こちらも Trichophyton rubrum が主な原因菌で、「頑癬」とも呼ばれます。
足白癬（水虫）: 足に発生する白癬。足趾間や足の裏に症状が現れ、かゆみや水疱、皮膚の剥離などが起こります。Trichophyton rubrum が最も多い原因菌です。
爪白癬（爪水虫）: 手足の爪に発生する白癬。爪が白く濁ったり、変形したりします。ほとんどの場合、Trichophyton rubrum が原因です。
* 頭部白癬（しらくも）・ケルズス禿瘡: 頭部に発生する白癬。毛嚢を破壊し、難治性の脱毛症を引き起こすものをケルズス禿瘡と呼びます。猫や牛との接触が原因となることが多いです。

検査と診断

白癬の診断は、医療機関で皮膚の表面をこすり取った落屑を顕微鏡で観察する皮膚真菌検査によって確定します。この検査では、落屑に苛性カリ溶液を加えて皮膚を溶解し、溶け残った白癬菌の有無を確認します。爪白癬の場合には、病変組織を採取して短時間で白癬菌の有無を判定できる検査キットもあります。

治療法

白癬の治療には、白癬菌を殺菌する抗真菌薬が用いられます。外用薬は医療機関で処方されるほか、薬局やドラッグストアでも購入できます。爪白癬や広範囲に感染が広がっている場合には、内服薬が必要となるため、医師の診断と処方箋が必要です。

市販薬を使用する場合、症状の改善には数週間かかることがあり、再発もよく見られます。数週間使用しても症状が改善しない場合は、医療機関を受診して適切な診断を受け、抗真菌薬を処方してもらうことが大切です。

漢方薬

漢方薬では、体力中等度で皮膚疾患があり、発赤や化膿が見られる場合に、十味敗毒湯（じゅうみはいどくとう）が用いられることがあります。これは、化膿性皮膚疾患、急性皮膚疾患の初期、じんましん、湿疹・皮膚炎、そして白癬（水虫）に対して効果が期待できます。

蜂蜜の効果

蜂蜜には殺菌作用があり、一部の研究では、頭部白癬や癜風の症状に対して、抗真菌薬と同等の効果が認められたという報告もあります。ただし、蜂蜜による治療は、医師の指導のもとで行うようにしましょう。

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