白石孝

白石孝の生涯と学問的貢献

白石孝（1921年11月21日 - 2013年10月17日）は、国際経済学と国際貿易論を専門とした日本の著名な経済学者です。慶應義塾大学の名誉教授および杏林大学の名誉教授として、長年にわたり教育と研究に尽力しました。

生い立ちと教育

1921年、東京市日本橋に生まれた白石は、明治学院中等部を経て慶應義塾普通部に編入。1941年に慶應義塾大学経済学部に進学し、岩田仭教授のゼミで国際経済学の基礎を築きました。1943年に同大学を卒業後、南貿汽船株式会社に入社し、その後兵役に従事。終戦後、大学院に進み、学問への情熱を再燃させました。

慶應義塾大学での活躍

1947年、慶應義塾大学経済学部の副手として教鞭を執り始め、1949年に助教授、1958年には商学部教授に昇進。1960年には経済学博士号を取得し、1964年には慶應義塾志木高等学校の校長も兼任。1965年には慶應義塾の常任理事に就任するなど、大学運営にも深く関わりました。1975年には商学部長、大学院商学研究科委員長を歴任し、1987年に定年退職するまで、50年以上にわたり慶應義塾に貢献しました。慶應義塾大学商学部設立以来、30年間その中枢にいたことは、退任記念号で特筆されています。

学外での活動

学外では、国際経済学会の理事および常任理事、日本経済学会の連合理事および事務局長を務めるなど、学術界の発展にも貢献しました。

研究活動

白石の研究は、岩田仭教授の国際経済学ゼミでの影響を強く受けています。岩田の著書『国際貿易論序説』から、経済史における貿易論の重要性を学びました。岩田の急逝後も、山本登教授の指導を受け、永田清や金原賢之助らからも薫陶を受けました。戦後の荒廃した状況の中で、学問への情熱を再確認し、研究活動を本格化させました。

小島清と篠原三代平の間で展開された「戦前の日本経済の発展における貿易の役割」に関する論争にも参加し、日本の貿易構造の分析を通して、為替相場が交易条件に大きく影響することを指摘しました。また、和気洋子と共に理論経済学の研究にも取り組みました。

教育活動

白石研究会（ゼミ）は47期まで続き、卒業生の相互交流も活発に行われました。白石ゼミの卒業生である陳俊龍（東呉大学副教授、当時）は、ゼミが厳しかった一方で、卒業生が社会で活躍していると述べています。また、夏休みの野尻湖でのゼミ合宿では、勉強だけでなく、ソフトボール、水泳、バレーボールなどの課外活動も充実していたと語っています。

若き日の白石が担当した国際貿易論の講義では、自身の論文に誤植があり、貿易が成立しないという事態に直面しましたが、持ち前の機転で学生と共に問題を解決し、学びを深めたというエピソードも残っています。

主な著書

白石は、数多くの著作を世に送り出しました。

単著

『国際貿易の基礎理論』（泉文堂、1949年）
『貿易政策要論』（泉文堂、1949年）
『現代貿易新講』（泉文堂、1952年）
『国際貿易論』（東洋経済新報社、1970年）
『経済革新と競争の世界―経済発展と対外投資―』（秀潤社、1976年）
『戦後日本通商政策史』（税務経理協会、1983年）
『戦後日本経済発展貿易政策史』（美徳文化社＜韓国＞、1984年）
『日本橋街並み繁昌史』（慶應義塾大学出版会、2003年）
『読んで歩いて日本橋―街と人のドラマ』（慶應義塾大学出版会、2009年）

共著・編著

『中国政治経済要覧』（一橋書房、1954年）
『日本の貿易政策』（有斐閣、1955年）
『国際不正競争の研究』（有斐閣、1955年）
『貿易』（有斐閣、1955年）
『日本貿易の計量的研究』（日本評論新社、1958年）
『講座国際経済』（有斐閣、1961年）
『欧州カルテルのアジアに及ぼす影響』（アジア経済研究所、1962年）
『日本経済と国際協力』（中央経済社、1965年）
『現代世界経済』（世界書院、1965年）
『総合経営管理』（河出書房、1968年）
『総合輸入対策の課題』（日本貿易会、1974年）
『国際化と企業内教育』（日本マネジメントスクール、1974年）
『多国籍企業の経済と経営』（日本経済調査協議会、1974年）
『わが国産業の国際競争対策の実態』（日本貿易会、1975年）
『国際経済の展望と新視点』（秀潤社、1976年）
『経済学通論』（税務経理協会、1980年）
『日本貿易会30年史』（日本貿易会、1980年）
『世界貿易の現状と見透し』（外務省経済局、1982年）
『アジア経済と地域研究』（東洋経済新報社、1986年）

白石孝は、教育者として、また研究者として、国際経済学の発展に大きく貢献した人物であり、その功績は後世に語り継がれるでしょう。

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