白石川

白石川：一目千本桜と治水の歴史が織りなす風景

宮城県南部を流れる一級河川、白石川。阿武隈川水系に属するこの川は、その流域に広がる豊かな自然と、幾多の災害を乗り越えてきた歴史を併せ持ちます。特に有名であるのは、大河原町から柴田町にかけて続く約1200本の桜並木、「一目千本桜」です。春には、堤防一面を埋め尽くす桜の壮麗な眺めは、多くの観光客を魅了し続けています。

白石川の源流から合流点まで

白石川は、山形県との県境にある奥羽山脈の蔵王連峰にその源を発します。七ヶ宿ダムの下流では流れが北東へ変わり、柴田郡柴田町槻木付近で阿武隈川へと合流します。上流に位置する七ヶ宿ダムは、仙台都市圏を含む宮城県中南部地域の水資源を確保する重要な役割を担い、ダム湖百選にも選ばれています。

中流域では、流れが緩やかな場所では中州が形成され、冬になると白鳥や雁などの水鳥が越冬のために集まります。これらの水鳥たちの姿は、白石川の豊かな自然環境を示す象徴となっています。しかし、白石川は美しい景観の裏で、度重なる水害の歴史も抱えています。

治水工事と桜の植樹：災害と復興の物語

かつて白石川は、たびたび流域に甚大な被害をもたらす洪水を起こしていました。寛永14年（1637年）には大洪水が発生し、金ヶ瀬元屋敷の集落は壊滅的な打撃を受けました。家屋は全て流失し、土地も失われたため、住民は領主の片倉氏の援助によって移住を余儀なくされました。

Taisho2年（1913年）の大水害では、柴田郡全体で180万円もの損害が発生しました。さらに、その年の冷害による凶作も重なり、流域の町村は深刻な窮状に陥りました。この状況を受けて、政府は原敬を勅使として派遣し、被災者への慰問を行いました。

この大水害を契機に、流域の町村は宮城県に白石川の治水を強く訴え、県治水会の決議へとつながりました。大正6年（1917年）から本格的な治水工事が開始され、流路の改修や堤防の建設などが行われました。この事業は大正12年（1923年）の秋まで続けられ、白石川の水害リスクを軽減することに大きく貢献しました。

治水工事が完成間近となった大正12年（1923年）の春、大河原町に1000本を超えるソメイヨシノが寄贈されました。寄贈者は大河原町出身の高山開治郎氏で、当時東京商機新聞の社長を務めていました。これらの桜は、新たに造られた堤防に植えられ、地域住民や柴田農林学校の生徒たちの手によって大切に育てられました。これが現在の一目千本桜であり、柴田町の船岡城址公園と共に日本さくら名所100選に選ばれています。

令和元年東日本台風と白石川

2019年10月13日、令和元年東日本台風（台風19号）の豪雨により、白石川の水位が急激に上昇しました。この豪雨によって、白石川の右岸一帯で内水氾濫が発生し、岩沼市では27戸が床下浸水する被害を受けました。この災害は、治水対策の更なる重要性を改めて浮き彫りにしました。

白石川を彩るもの

白石川流域には、七ヶ宿町、白石市、蔵王町、大河原町、村田町、柴田町など多くの自治体が位置し、それぞれが独自の文化と歴史を育んできました。また、白石川には斎川、児捨川、松川、荒川などの支流が流れ込み、複雑な水系のネットワークを形成しています。

多くの橋梁も白石川流域の生活を支えています。白石大橋、新白石大橋、白川大橋、大河原橋、尾形橋、末広橋、柴田大橋、さくら船岡大橋、白幡橋など、それぞれの橋が地域の交通や歴史と深く関わっています。

白石川は、美しい桜並木と豊かな自然、そして災害と復興の歴史を刻み込んだ、宮城県の重要な一級河川です。その未来を守るため、治水対策を含めた地域全体の継続的な努力が不可欠です。

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