白石悌三

白石悌三：近世俳諧研究のパイオニア

白石悌三(1932年-1999年)は、近世日本の文学、特に俳諧研究において重要な足跡を残した学者です。福岡県立修猷館高等学校卒業後、九州大学に進学し、国文学を専攻。同大学大学院博士課程を修了後、九州大学助手、福岡大学講師、助教授を経て、立教大学助教授、教授を歴任しました。その後、再び福岡大学に戻り、教授として人文学部長を務め、1999年に定年退職、名誉教授となりました。同年7月、永眠されました。

白石氏の専門は俳諧であり、その研究は幅広く、深遠なものとなりました。特に、芭蕉を中心とした近世俳諧史の研究においては、独自の視点を提示し、多くの研究者たちに影響を与えました。彼の研究は、単なる文献の解釈にとどまらず、当時の社会状況や文化風習を踏まえた上で、俳諧という文学ジャンルを多角的に考察するものでした。

学術的な貢献に加え、教育者としても優れた手腕を発揮しました。長年にわたり大学で教鞭をとり、多くの学生を育成。後進の指導にも熱心で、彼から薫陶を受けた研究者たちは現在も第一線で活躍しています。指導においては、個々の学生の能力や特性を見抜き、それぞれの成長を促すことに力を注ぎ、多くの研究者を育成しました。

白石氏の業績を代表するものとして、『去来先生全集』があります。この著作により、1983年には文部大臣奨励賞を受賞、その学問的功績が高く評価されました。同書は、近世俳諧における重要な人物である去来に関する膨大な資料を網羅し、緻密な研究に基づいた内容となっています。また、遺稿となった著作では、芭蕉以降、特に享保期の俳諧や、英一蝶、芳賀一晶、水間沾徳といった俳諧師に関する研究を通して、独自の俳諧史観を提示しています。これは、従来の研究とは異なる視点からのアプローチであり、近世俳諧研究に新たな地平を開いたものとして高く評価されています。

著書としては、『芭蕉』、『江戸俳諧史論考』などが挙げられます。これら以外にも、『年表資料近世文学史』、『芭蕉物語 蕉風の<人と詩>の全体像をさぐる』、『連句への招待』、『西鶴と近松』、『新日本古典文学大系』、『松尾芭蕉 永遠の旅人』など、多くの共編著、共著も出版しており、多岐にわたる分野で活躍しました。これらの著作は、現在でも近世文学研究において重要な参考文献として活用されています。

白石悌三の研究は、近世俳諧研究に多大な貢献をしました。彼の学問的遺産は、後世の研究者たちにとって貴重な財産であり、日本の近世文学研究の発展に大きく貢献しました。彼の生涯と業績は、これからも長く記憶に留められるでしょう。

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