日本古典文学大系

日本古典文学大系の系譜：岩波書店の古典文学叢書

岩波書店は、日本の古典文学を体系的に収録した叢書を複数刊行しています。その代表的なものが「日本古典文学大系」とその改訂版である「新日本古典文学大系」、そして明治時代の文学作品を対象とした「新日本古典文学大系 明治編」です。これらの叢書は、日本文学研究において重要な役割を果たしており、多くの研究者や愛好家によって活用されています。

日本古典文学大系（旧大系）

「日本古典文学大系」は、上代から近世（江戸時代後期）までの古典文学を網羅した全100巻（別巻1巻）からなる大規模な叢書です。1957年から1967年にかけて、第1期と第2期に分けて刊行されました。A5判というコンパクトなサイズを採用した点が、それまでの日本古典叢書とは異なる特徴でした。編纂には、高木市之助、西尾実、久松潜一、麻生磯次、時枝誠記といった当時の第一線の日本文学研究者が携わっており、高い学術性を誇っています。収録作品は年代順に配列されており、日本の古典文学の流れを理解する上で非常に有用です。現在では多くの巻が絶版となっていますが、その内容は依然として高く評価されています。代表的な収録作品としては、『日[[本書紀]]』『竹取物語』『大鏡』などがあります。

新日本古典文学大系（新大系）

1989年から2005年にかけて刊行された「新日本古典文学大系」は、「日本古典文学大系」の改訂版という位置付けです。収録作品の一部を入れ替え、最新の研究成果を反映した内容となっています。旧大系と比較して、より現代的な注釈や解説が加えられている点が大きな特徴です。また、背表紙の色が青色であることから「青大系」と呼ばれることもあります。旧大系で収録されながら新大系に収録されていない作品も存在し、それらのいくつかは「日本古典文学大系　新装版」として改めて刊行されました。代表的な収録作品としては、『万葉集』『蜻蛉日記』『落窪物語』などがあります。

新日本古典文学大系 明治編

「新日本古典文学大系」は、江戸時代以前の文学作品が中心でしたが、2001年から2013年にかけて、明治時代の文学作品を対象とした「新日本古典文学大系 明治編」が刊行されました。全30巻からなり、近代日本文学の多様な様相を反映した作品が収録されています。この叢書によって、岩波書店の古典文学叢書は、近代文学へとその範囲を広げました。編集委員には、中野三敏、十川信介、延広真治、日野龍夫といった近代日本文学研究の専門家が名を連ねています。『汗血千里の駒』『浮雲』といった作品が収録されています。

岩波文庫との関係

「日本古典文学大系」、「新日本古典文学大系」、「新日本古典文学大系 明治編」の収録作品の中には、岩波文庫にも収録されているものもあります。しかし、文庫版では、注釈や解説などが一部省略されている場合がある点に注意が必要です。

まとめ

岩波書店が刊行した3種類の古典文学叢書は、それぞれに特徴を持ちながら、日本の古典文学と近代文学の研究・普及に大きく貢献してきました。これらの叢書は、現代においても貴重な研究資料として、そして古典文学を学ぶための優れたテキストとして、広く活用されています。それぞれの叢書は、最新の研究成果を取り入れながら、日本文学史における重要な位置を占めています。今後、これらの叢書のデジタル化なども期待され、より多くの研究者や愛好家に利用される機会が増えることが予想されます。

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