白藤江の戦い (1288年)

白藤江の戦い（1288年）

1288年、ベトナム北部白藤江にて、陳朝と元軍の間で激戦が繰り広げられました。この戦いは、元による3度目のベトナム侵攻（第3次越戦争）における重要な局面であり、元軍の壊滅的な敗北という結果に終わりました。

経緯

1258年と1285年の二度におよぶベトナム侵攻の失敗後、元朝皇帝クビライは、至元24年（1287年）に大規模な軍隊を派遣、三度目の侵攻を開始しました。総司令官にはクビライの息子、鎮南王トガンが任命され、9万の兵力と多数の戦船、そして大量の食糧を運ぶ船団が動員されました。

元軍は国境を越え、諒山、北江へ侵攻。陳朝軍の総司令官、陳国峻（陳興道）は、巧みな戦略で元軍を迎え撃ちました。隘路や要害で抵抗し、徐々に後退しながら、元軍を消耗させる作戦をとったのです。

至元25年（1288年）に入ると、トガンは萬劫を占領、長期戦の準備を始めました。一方、ウマル将軍率いる元軍の船団は白藤江を遡上し、トガン軍と合流しました。この船団には、張文虎将軍が指揮する莫大な量の食糧を積んだ船団も含まれていました。

雲屯の戦い

陳慶余将軍は、ウマルの船団が通過した後、鈍重な糧船船団を奇襲攻撃する計画を立てました。そして、雲屯にて待ち伏せ、張文虎の糧船船団を襲撃、多くの船を沈没もしくは拿捕することに成功しました。この奇襲は、元軍の補給線を断つ大きな打撃となりました。

白藤江の戦い

トガンは軍を三分割し、昇龍を占領しましたが、陳朝はすでに「清野」作戦（焦土作戦）を実施済みで、城は空っぽでした。元軍は陳朝の抵抗勢力を壊滅できず、次第に劣勢に立たされます。トガンは危機を感じ、萬劫から水路と陸路の二手に分かれての撤退を決断しました。

この機を逃さず、陳朝は反撃を開始します。陳国峻は白藤江の潮位を綿密に調べ、川底に杭を打ち込み、伏兵を配置しました。

3月初め、ウマルの船団が白藤江を遡上してきました。陳軍の軽舟がわざと敗走するふりをして元軍を誘い込みます。元軍が伏兵地点に到達したその時、両岸から無数の陳軍の小舟が襲いかかりました。潮が引き始めたタイミングを見計らった攻撃でした。元軍は逃げ惑いますが、干潮で現れた川底の杭によって退路を阻まれ、多くの船が破壊、沈没しました。さらに、陳軍は火をつけた筏を流し、船団を炎上させました。生き残った兵士たちも、待ち構えていた陳朝軍の歩兵に襲われ、壊滅的な打撃を受けました。ウマルも捕虜となりました。

トガン率いる部隊は萬劫から諒山方面へ逃走しましたが、陳朝軍の追撃を受け、広西へ逃げ帰りました。白藤江の戦いは、陳朝軍の巧みな戦略と元軍の油断、そして自然条件を巧みに利用した戦闘によって、元軍に決定的な敗北をもたらしたのです。この戦いは、ベトナムの歴史において重要な勝利として記憶されています。

脚注

本記事の記述は、様々な史料を参考に作成されていますが、歴史的事実の解釈には異説も存在することをご承知おきください。

参考文献

ファン・ゴク・リエン監修『ベトナムの歴史　ベトナム中学校歴史教科書』《世界の教科書シリーズ21》明石書店、2008年。

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