白馬山荘殺人事件

白馬山荘殺人事件

『白馬山荘殺人事件』は、名作ミステリー作家・東野圭吾によって書かれた推理小説で、1986年に発表され、後に光文社文庫からも刊行されました。物語は、主に原菜穂子とその友人・沢村真琴の視点で展開され、様々な人物が交錯する中で、深い謎へと誘います。

あらすじ

物語は、原菜穂子の兄が、「マリア様が、家に帰るのはいつか」という不明なメッセージを残して突然死するところから始まります。彼が亡くなった部屋は密室であり、その状況から警察は自殺と判断します。しかし、菜穂子は兄の死に疑念を持ち、親友の真琴と共に真相を解明するための行動に出ます。

彼女たちは、マザー・グースの歌詞を解読することで、兄の死の裏に隠された真実に迫っていきます。物語は、この謎を追いながら、登場人物たちの心理や人間関係も描き出していきます。

登場人物

• - 原菜穂子: 大学3年生で、ペンション「まざあ・ぐうす」の「ハンプティ・ダンプティ」に宿泊。兄の死を受けて真相を求める。
• - 沢村真琴: 菜穂子の親友で、共に宿泊している大学生。菜穂子とともに謎解きに挑む。
• - マスター: ペンションのオーナー。
• - シェフ: ペンションの共同経営者、大男である。
• - 高瀬: ペンションの若い従業員。
• - クルミ: ペンションの従業員で女性。
• - ドクター夫妻: ペンションの客で、老夫婦。
• - 芝浦夫妻: 30代半ばの客。
• - 上条: ペンションに滞在する30代男性。
• - 大木: スポーツマンタイプの30歳前の男性。
• - 江波: 29歳の男性客。
• - 中村、古川: 20代前半の宿泊客。
• - 村政警部: 殺人事件の捜査を担当する警部。

部屋の名前はそれぞれの部屋にかかげられたマザー・グースの歌にちなんで名付けられていますが、「旅立ち」の部屋だけは特異な由来を持っています。この部屋名は、元々別荘の持ち主によって与えられたもので、これも物語の謎を深める要素となっています。作中に登場するマザー・グースの童謡は、単なる背景にはとどまらず、解答への手がかりともなっているのです。

解説

文芸評論家の権田萬治は、本作が東野圭吾のキャリアにおいて、学園小説から新しい作品領域への飛躍を示す重要な作品であると高く評価しています。この作品は、緻密なプロットとキャラクターの心理描写によって、読者を惹きつけ、その先の展開に興味を持たせる力を持っています。謎解きの要素を含んだ多重構造の物語は、単なるサスペンス小説にとどまらず、友情や人間関係の複雑さも描きだしており、読み応えのある作品に仕上げられています。

『白馬山荘殺人事件』は、単なるミステリー作品を超えた、心の奥に残る印象深い物語です。

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