白鳥事件

白鳥事件の概要

白鳥事件（しらとりじけん）は、1952年1月21日に北海道札幌市で発生した、日本共産党による警察官の射殺事件です。この事件は、共産党による警察官襲撃の一例として位置付けられ、約10年以上にわたる政治的・法的な争いを引き起こしました。

事件の背後には、当時の日本共産党の武装闘争路線や、札幌市警警備課課長の白鳥一雄警部が行っていた共産党に対する厳しい弾圧が影響しています。事件直後には、白鳥が共産党員からの脅迫状を受け取っていたことが発覚し、警察は共産党の関与を疑い捜査を始めました。事件の実行犯とされる人物たちは、党の指導部によって国外逃亡しましたが、村上国治が主な責任者として逮捕され、その後の裁判で有罪判決を受けました。

事件の経緯

1952年当時、日本共産党は「51年綱領」を採択し、武装闘争を本格化させる方針を採っていました。これは党内で、札幌委員会の村上国治や他の幹部らが中心となり行われました。彼らは、大学生たちを集めて中核自衛隊を結成し、さまざまな暴力事件を引き起こしました。これに対抗して、白鳥は数々の共産党関連のデモを取り締まり、多くの共産党員を検挙しました。このように、白鳥は共産党から敵視されていました。

1952年1月21日午後7時42分頃、白鳥警部は札幌市内で自転車に乗って帰宅途中に襲撃され、心臓を撃たれて即死しました。凶器となったのは32口径のブローニング拳銃とされており、犯人は現場から逃走しました。事件後、共産党員らが「天誅ビラ」を配布し、この暴力的な行為を称賛しましたが、党の指導部は一貫して関与を否定する声明を出しました。

裁判と冤罪の疑惑

村上国治は、1955年に逮捕された後、共同謀議を認定され、無期懲役を言い渡されました。続く控訴審では20年に減刑され、最終的には1963年に懲役20年の有罪判決が確定しましたが、彼の弁護側は証拠の不備を指摘し、証拠捏造の可能性があると主張しました。

特に、事件に使用された弾丸についての鑑定結果や、検察提出の証拠が問題視されました。村上が無罪を訴え、再審請求を行ったものの、最高裁判所は彼の主張を退けました。しかし、この裁判の過程で刑事裁判における『疑わしきは被告人の利益に』という原則が強調され、これが後の再審制度に影響を与えることになりました。この判決は「白鳥決定」と呼ばれ、証拠や証言に対する審査が厳格だった従来の再審制度に変化をもたらしました。

事件後の影響と評価

白鳥事件は、日本共産党の活動に対する国民の支持を失わせる要因の一つとなりました。事件を受けて、吉田茂首相は共産党に対する厳しい措置を講じ、破壊活動防止法を制定しました。また、白鳥事件を契機に冤罪問題が広がり、他の事件における再審請求も増えることとなります。特に明らかとなった証拠の不備が、後の無罪判明事件に影響を与え、司法制度に対する信頼を揺るがしました。

事件に関与したとされる共産党員たちの多くは、機会を見て国外へ逃げ延び、文化大革命を経た後に帰国した者もいます。しかし、この事件の真相や村上の冤罪の可能性については、今もなおさまざまな意見が交わされています。事件は、その後の日本の政治や司法における重要な議題となり、改めて歴史的な視点で見直される必要があります。

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