白鳥貯木場

白鳥貯木場の歴史と変遷

白鳥貯木場は、愛知県名古屋市熱田区の堀川沿いに位置した、かつての木材流通の中心地です。江戸時代初期から近代まで、約400年もの長きにわたり、日本の三大木材市場の一つとして機能しました。その歴史と変遷を詳しく見ていきましょう。

江戸時代：名古屋城築城から木材集積地へ

白鳥貯木場の起源は、1610年（慶長15年）の名古屋城築城時に、資材置き場として設けられたことに遡ります。福島正則が堀川沿いの白鳥に大池を掘り、これを「太夫堀」と呼んだことが、最初の木材置場とされています。この太夫堀の一部は、現在も白鳥公園内に残されています。

1615年（元和元年）に木曽が尾張藩領となると、白鳥材木奉行所が設置され、木曽の山で伐採された木材が筏で木曽川を下り、堀川を通って白鳥貯木場に集められるようになりました。ここでは、山筏を解体して木材を検知し、貯材を管理するとともに、藩幕御用や商材処分が行われました。貯木場は、1651年（慶安4年）から幕末にかけて繰り返し拡張され、最終的には2万3千9百坪の広さになりました。

明治時代以降：近代化と木材需要の拡大

1872年（明治5年）、貯木場は一時的に民間に払い下げられますが、1876年（明治9年）には木曽山官行伐採の開始に伴い、内務省地理局が買い戻しました。これにより、木曽材は入札により一般の材木商人に払い下げられるようになりました。

明治時代後期になると、名古屋の経済発展や木材産業の隆盛により、白鳥貯木場で扱う木材は木曽・飛騨産だけでなく、他地域の木材も入るようになりました。貯木場はさらに拡張され、1921年（大正10年）には総面積5万7千坪余りとなりました。周辺には民間の貯木場も多く建設されました。

また、木材の輸送方法も変化しました。1911年（明治44年）の中央西線と名古屋港線の開通以降、木曽・飛騨からの御料材輸送は筏から陸送へと移行し、木曽川での筏流しは1922年（大正11年）、飛騨川では1933年（昭和8年）が最後となりました。

伊勢湾台風以降：貯木場の終焉と跡地の活用

1959年（昭和34年）の伊勢湾台風は、名古屋市内の貯木場に甚大な被害をもたらしました。高潮で流出した木材が市街地を破壊したことから、貯木施設を集約する目的で、1968年（昭和43年）に名古屋市外に西部木材港が建設されました。これにより、白鳥貯木場周辺の木材業者の多くが拠点を移しました。

国内の天然林資源の減少や輸入材の増加により、白鳥貯木場に集まる木材は減少していき、1979年（昭和54年）から順次、貯木場の用地は名古屋市へ売却・埋め立てられ、一部は白鳥公園として整備されることになりました。

1986年（昭和61年）以降、貯木場内には「暮らしの木材展示館」や「木の住まい白鳥ハウジングセンター」が設置され、貯木場の役割は広報機能へと重点が移っていきました。1989年（平成元年）には、世界デザイン博覧会の白鳥会場として利用され、貯木場の広報施設は「ウッディランド・名古屋」として博覧会に協賛しました。

博覧会後、跡地は公共施設や都市公園に転用され、1996年（平成8年）に貯木場の市場が廃止、2002年（平成14年）には「ウッディランド・名古屋」も閉館しました。

しかし、2004年（平成16年）には、林野庁の事務局「中部[[森林管理局]]名古屋事務所」が設置され、木工教室などの活動も継続されました。現在では、国産材の利用促進や情報発信を行う拠点として、地域住民に活用されています。

現在：多様な施設が立ち並ぶ場所へ

現在、白鳥貯木場の跡地には、農林水産庁林野庁中部[[森林管理局]]名古屋事務所、熱田白鳥の歴史館をはじめ、公団住宅、公営住宅、名古屋国際会議場、白鳥公園、白鳥庭園、名古屋学院大学しろとりキャンパス、マンションなどが立ち並び、かつての貯木場の面影はありません。

年表

1610年（慶長15年）頃: 福島正則らが資材置き場を設置、白鳥貯木場の起源となる。
1615年（元和元年）: 木曽が尾張藩領となり、白鳥材木役所（御材木奉行所）を設置。
1869年（明治2年）: 尾張藩営木曽山伐出事業が打ち切り。
1872年（明治5年）: 貯木場が鈴木惣兵衛に払い下げ。
1876年（明治9年）: 貯木場が内務省地理局に買い戻される。
1877年（明治10年）: 国が白鳥貯木所を設置。
1916年（大正5年）: 名古屋港線に白鳥駅が開業。
1959年（昭和34年）: 伊勢湾台風により、貯木場に係留されていた木材が流出。
1968年（昭和43年）: 西部木材港が開設。
1979年（昭和54年）: 熱田営林署が廃止され、貯木場の一部が名古屋市へ売却。
1981年（昭和56年）: 貯木場跡地を白鳥公園とする都市計画が決定。
1982年（昭和57年）: 国鉄白鳥駅が廃止。
1986年（昭和61年）: 「暮らしの木材展示館」がオープン。
1989年（平成元年）: 世界デザイン博覧会が開催。「ウッディランド・名古屋」が協賛参加。
1996年（平成8年）: 白鳥貯木場が事実上の廃止。
2002年（平成14年）: 「ウッディランド・名古屋」が閉館。
2005年（平成17年）: 木材保管場所跡地などが名古屋学院大学の敷地となる。
2006年（平成18年）: ヴィー・クオレタワー白鳥庭園が開設。
2007年（平成19年）: 名古屋学院大学名古屋キャンパス白鳥学舎が開設。
2015年（平成27年）: 熱田白鳥の歴史館が開館。

白鳥貯木場は、その役割を終えましたが、その歴史と木材産業への貢献は、現在も語り継がれています。跡地は多様な施設として活用され、地域住民の生活を支えています。

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