百々目鬼

百々目鬼（どどめき）

百々目鬼とは、鳥山石燕の著作『今昔画図続百鬼』に描かれている妖怪の一つです。本妖怪は、特徴的な女性の姿で描かれ、特に腕には無数の目が存在しています。この独特の姿からは多くの興味深い解釈が生まれています。

1. 概要と起源

百々目鬼についての詳細は、石燕自らの解説文に示されています。この中で、彼は「函関外史」と呼ばれる奇書に記載されている話を引用し、ある女性が手が長く、他人の金銭を盗むさまを描写しています。すると、彼女の腕には百鳥の目が現れ、それが「百々目鬼」という名前の由来だとされています。この話からは、鳥目（ちょうもく）という言葉と、金銭、さらには地名にまつわる考察が浮かび上がります。

この妖怪の名付けの背景には、「鳥目」という言葉の使用があり、これは中央に穴の開いた銅銭を指し示しています。この部分が鳥の目に似ていることから「百目鬼」や「百目貫」といった名称が生まれ、地域によって「どどめき」や「どうめき」とも読まれることがあります。このように、百々目鬼は石燕が創作した妖怪であると考えられており、その名は銅銭および地名と関連していると言えるでしょう。

2. 出典の疑問

興味深いことに、同時代において百々目鬼が描かれた他のどの作品も確認されておらず、また『函関外史』自体の存在についても懐疑的です。「函関」とは明らかに箱根を指すものであり、石燕が遊び心でこの名前を引用した可能性も考えられます。用語の巧妙さや「奇書」という表現が使われている点をみても、この作品は石燕の独特な創作の一部であると推測されます。

3. 類似の表現

江戸時代の絵画の中に、百々目鬼と全く同様の情報を持つ作品は存在しませんが、妖怪を題材にしたかるたには「土佐の山ごへのどど目鬼」という表記があります。これは、おそらく百々目鬼と同様に腕や頭に目を持つ妖怪を指すものであり、描写も存在します。また、「百々眼鬼」という名称が使われた肉筆画もありますが、こちらは百々目鬼とは共通しているのが目の多さだけで、他には特に共通点が見られません。

4. 現代における認識

現代においては、石燕の表記が「どどめき」である一方で、昭和以降の妖怪に関する文献では「とどめき」と表記されることも頻繁にあります。同様に、無数の目の存在が、彼女がかすめとった金銭が腕に貼り付き、それが目に変わったという解釈も一般的になっています。

まとめ

百々目鬼は、日本の妖怪文化における特異な存在であり、彼女の姿や名前の由来には深い意味があります。百々目鬼のような妖怪を通じて、我々は昔の人々の価値観や想像力に触れることができるのです。今後もこの妖怪についての研究が進められていくことを望みます。

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