百二十八分音符

百二十八分音符とは、西洋音楽における音符の一つで、その音価は全音符を1とした場合に128分の1に相当します。これは、同じく短い音価を持つ64分音符のちょうど半分の長さにあたります。

楽譜上でこの音符を表記する場合、符幹（ぼう）には5本の旗（はた）がつけられます。もし複数の百二十八分音符が連続して記される場合は、符幹から共通して伸びる5本の桁（連桁、れんげた）によって一つにまとめられるのが一般的な記譜法です。

これほどまでに短い音価の音符は、実際に印刷された楽譜において目にすることは極めて稀です。その理由の一つとして、音楽のテンポ設定によって、より桁数の少ない音符で結果的に同じ時間的な長さを表現することが可能である点が挙げられます。例えば、あるテンポで記された32分音符の長さは、その倍の速いテンポで記された16分音符と等しくなります。このように、テンポ記号を調整することで、同じ演奏時間をより単純な音符表記で示すことができるため、百二十八分音符の登場機会は限られています。

しかし、全く使われないわけではありません。百二十八分音符は主として、アダージョのような非常にゆっくりとした楽章の中で、一瞬の急速な動きを表現したい場合や、細かい装飾的なパッセージを明確に示すために用いられることがあります。

具体的な楽曲例としては、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲のピアノソナタ第8番 ハ短調 作品13『大ソナタ悲愴』の第1楽章において、急速に駆け上がる音階パッセージの表記にこの音符が使われている箇所が見られます。また、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの歌曲に基づくピアノのための変奏曲『ああ、お母さん、あなたに申し上げましょう（きらきら星変奏曲）』の異稿ともされる『Je suis Lindor』による変奏曲にも登場し、特に緩やかなテンポで書かれた第12変奏などで確認できます。さらに、ヨハン・ゼバスティアン・バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番 ト短調 BWV 1001の冒頭アダージョ楽章には、明確に百二十八分音符として記された装飾的なルラードが含まれています。

こうした符幹に5本の桁を持つ極めて短い音符は、あるパッセージを非常に速く演奏することを意図して用いられる特殊なケースでも現れます。その際の実際の演奏速度は、楽譜上の拍子分割に厳密に従うというよりは、演奏者の技術や音楽的な解釈に委ねられる傾向が見られます。場合によっては、表記された音価の合計が拍の厳密な分割と一致しないことがあり、その意図を示すために奇数による時分割（例えば1拍の中に9個の百二十八分音符を収めるなど）で記されることもあります。加えて、これらの非常に短い音符が、通常の音符より小さく印刷され、あたかも装飾音符のように扱われることもあります。

極めて稀な例ですが、符幹に5本の桁を持つこの音符が、主要な旋律音ではなく、先行する音に添えられる砕音（アッチャッカトゥーラ）として用いられるケースも存在します。フランスの作曲家シャルル＝ヴァランタン・アルカン作曲の『3つの大練習曲』作品76の第2番の終結部には、その具体的な使用例が見られます。

百二十八分音符に対応する百二十八分休符も存在します。これもまた楽譜上での登場は百二十八分音符と同様に稀ですが、使用例は確認されています。例えば、ベートーヴェンのピアノソナタ第13番 変ホ長調 作品27-1『幻想曲風ソナタ』の緩徐楽章（第2楽章）の第24小節には、百二十八分休符が一つ記されています。

これらの例が示すように、百二十八分音符および休符は、作曲家が極限的な短さや速度を表現するために、あるいは特定の歴史的・様式的な文脈において、稀に選択する特殊な音価であると言えます。

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