八分音符

八分音符（はちぶおんぷ）は、西洋音楽の楽譜で用いられる音符の一つで、特定の音の持続時間を示す記号です。その長さは、基準となる全音符の厳密に8分の1に相当します。これは、例えば十六分音符の倍の長さであり、逆に四分音符の半分、二分音符の4分の1に当たります。さらに長い音符と比較すると、倍全音符の16分の1、ロンガと呼ばれる極めて長い音符の32分の1の長さに該当します。

この音符の形状は、黒く塗りつぶされた楕円形の「符頭（ふとう）」、符頭から垂直に伸びる「符幹（ふかん）」、そして符幹の端に付いた一本の「符尾（ふび）」または「はた」から成り立っています。

符幹が上向きに伸びるか下向きに伸びるかは、五線譜上の符頭の位置によって慣習的に決められています。器楽譜の場合、符頭が五線譜の中央の線よりも下にある場合は、符幹は符頭の右側から上方向へ伸びます。一方、符頭が中線上、または中線よりも上にある場合は、符幹は符頭の左側から下方向へ伸びるのが標準的です。ただし、声楽譜においては、歌いやすさや視覚的な整合性を考慮し、中線上の符頭でも符幹が上向きに書かれることがあります。この符幹の向きは、楽譜全体の見た目を整え、演奏者が瞬時に情報を把握しやすくするために重要です。

八分音符と同様の長さで「音を出さない」ことを示すのが八分休符（はちぶきゅうふ）です。八分休符は、楽譜上で数字の「7」やその反転したような独特の記号で表され、指定された時間だけ演奏を休止することを指示します。

楽譜作成においては、複数の八分音符が連続する場合、それぞれの音符に個別の符尾を付ける代わりに、「連桁（れんこう）」と呼ばれる太い横線で符幹同士をつないで書くのが一般的です。これにより、音符のグループ化が視覚的に明確になり、楽譜を読む際に拍子やリズムのまとまりを把握しやすくなります。例えば、4分の4拍子では2つまたは4つの八分音符をまとめて連桁でつなぐことが多く行われます。また、3/8、6/8、9/8、12/8拍子のような複合拍子においては、拍のまとまりを示すために3つの八分音符を一組として連桁でつなぐ記法が標準的に用いられます。

現代のデジタル環境において八分音符を扱うため、国際的な文字コードであるUnicodeには関連する複数の記号が含まれています。広く普及している記号としては、「♪」（U+266A）が単独の八分音符を、「♫」（U+266B）が2つの八分音符が連桁で繋がったペアを表現します。これらの記号は、古くからコンピュータで用いられてきたコードページ437にルーツを持ちます。さらに、日本語の絵文字セットに由来する、より図案化された記号も存在します。これらには、上向きの八分音符（🎜, U+1F39C）、下向きの八分音符（🎝, U+1F39D）、そして一般的な音符のイメージとして描かれた八分音符（🎵, U+1F3B5）や、連桁で繋がっていない3つの八分音符を並べた記号（🎶, U+1F3B6）などがあります。また、本格的な楽譜作成ソフトウェアでの使用を想定した、音楽記号ブロック内のより多様な八分音符のバリエーションもUnicode規格には含まれており、デジタル音楽表現の基盤となっています。

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