百武兼行

百武 兼行（ひゃくたけ かねゆき）

百武兼行は、1842年7月14日、佐賀藩において誕生しました。彼は日本の洋画界における重要な人物であり、洋画を学び、傑作を残した日本の先駆者の一人です。彼の家系は佐賀藩士であり、著名な武将、百武賢兼の直系子孫でもあります。父、百武兼貞は、佐賀藩の留守居役などを務めた人物であり、地元の磁器製法の発展にも貢献しました。幼少期は鍋島藩の藩主との関係もあり、彼の成長過程は当時の歴史背景と深い結びつきがありました。

初期の教育と渡欧

彼が洋画に関心を持つようになったのは、幕末から明治維新期の動乱の中での経験が影響していたと考えられます。1871年（明治4年）には岩倉使節団に参加し、初めて渡欧します。この際、鍋島直大の秘書役としての任務を果たしながら、経済学を学びました。この旅行は彼にとって洋画を学ぶ大きなきっかけとなりましたが、074年に発生した佐賀の乱の影響で早期帰国を余儀なくされました。

第二次滞欧と芸術的成長

1874年の帰国後、乱が鎮静化すると再びロンドンに渡ります。ここでは風景画を学びましたが、さらにパリでの人物画の技法も習得しました。特に1875年からは、鍋島直大の妻、胤子の油絵の指導がきっかけとなり、リチャードソン博士から画技を学ぶ機会を得ます。この時期に彼は、ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツの展覧会に作品が入選、これが日本人として洋画を学ぶ上での重要な功績とされています。

フランスでの研鑽と作品

1878年には再びパリに滞在し、アカデミー派の重鎮レオン・ボナに師事して洋画技術の習得に努めました。彼の代表作「臥裸婦」は日本人による初の油彩裸婦像とされ、彼の画業における重要なマイルストーンとなります。彼の作品は、当時の西洋画の技法を取り入れた新たな表現がなされており、日本の美術界に新しい風をもたらしました。

帰国と晩年

1882年に帰国した後は、農商務省に勤務しましたが、健康を損ね肺結核に罹患します。彼の作品は生前に残されたものが限られており、約40点ほどだとされています。1884年、42歳の若さでこの世を去った彼ですが、その記憶は日本の美術史に深く刻まれています。百武兼行は、近代日本の洋画家としての先駆けとなり、多くの後進のアーティストに影響を与え続けた人物として評価されているのです。

もう一度検索