皇帝属州

皇帝属州

皇帝属州とは、古代ローマ帝国において、ローマ皇帝が属州総督を任命する権限を有していた属州を指します。これは、元老院が総督を任命する元老院属州とは対照的な存在でした。

成立の背景

皇帝属州の起源は、初代皇帝アウグストゥスに遡ります。アウグストゥスは元老院から複数の属州の統治を委任されましたが、その全てを自身で管理することは不可能でした。そこで、代理人を立てて統治を行わせるようになり、これが皇帝が任命する属州の始まりとなりました。

法制度上の扱い

ローマ帝国においては、皇帝属州は「元老院が皇帝を総督に任命した属州」として扱われていました。そのため、法制度上は元老院属州との明確な違いはなく、表向きは総督の任命権は元老院にありました。しかし、実際には皇帝が任命した総督は皇帝の代理として統治を行い、皇帝自身が制度上の正式な総督とみなされていました。

特徴

皇帝属州は、主に軍団が駐留する防衛線の境域に多く存在していました。これらの地域は、軍事的な重要性が高く、属州統治には高度な能力が求められました。そのため、皇帝は特に有能な人材を総督に任命し、必要に応じて任期を延長することもあったようです。

主な皇帝属州

以下に、主な皇帝属州の例を挙げます。

[アエギュプトゥス]
アルペス(Alpes)（コッティアエ(Cottiae), マリティマエ(Maritimae), ポエニナエ(Poeninae) の3州）
[キリキア]
ダルマティア(Dalmatia)
[ガラティア]
[ガリア]（アクィタニア(Aquitania), ベルギカ(Belgica), ルグドゥネンシス(Lugudnensis)）
[ゲルマニア]（高地(Superior), 低地(Inferior)）
タラコネンシス(Tarraconensis)（イベリア半島の一州）
ルシタニア(Lusitania)
[モエシア]
[ノリクム]
[パンノニア]
ラエティア(Raetia)
サルディニア・コルシカ(Sardinia et Corsica)
シュリア(Syria)
トラキア(Thracia)

これらの属州は、ローマ帝国の版図拡大と維持において重要な役割を果たしました。皇帝属州の存在は、ローマ帝国の統治機構の複雑さと、皇帝の権力の大きさを物語るものと言えるでしょう。

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