皇族会議

皇族会議：旧皇室における重要事項の諮詢機関

皇族会議は、かつて存在した日本の諮詢機関であり、皇室に関する重要な事項を合議するために設けられました。天皇が自ら臨席し、成年男子の皇族によって構成されていました。内大臣、枢密院議長、宮内大臣、司法大臣、大審院長も会議に臨席しましたが、評決権は有していませんでした。

皇族会議の構成と役割

皇族会議は、成年以上の皇族男子を議員とし、内大臣、枢密院議長、宮内大臣、司法大臣、大審院長が参列していました（旧皇室典範第55条）。天皇が議長を務めるか、皇族1名を議長に指名することもありました（第56条）。

最も重要な任務は、天皇が長期間にわたり政務を執ることが不可能になった場合に、枢密院と共同して摂政を設置することでした（第19条第2項）。具体的な運営については、皇室令である皇族会議令（明治40年2月28日公布、同年3月20日施行）に規定されていました。

皇族会議令には、会議の召集は勅命（天皇の命令）によること（第1条）、摂政が設置されている時は摂政が召集すること（第2条）、議員は自己に利害関係のある議事については採決に参加できないこと（第9条）などが定められていました。会議の議決結果は、天皇が議事を統理しないときは、議長から天皇に奏上することになっていました（第10条）。事務局は宮内省が担当していました（第13条）。

皇族会議の廃止

1947年（昭和22年）5月1日に勅定された皇室典範及皇室典範増補廃止ノ件による旧皇室典範の廃止と、皇室令及附屬法令廢止ノ件（昭和22年皇室令第12号）による皇室令全ての廃止とともに、翌5月2日（日本国憲法及び現皇室典範施行の前日）限りで皇族会議は廃止されました。

皇室会議との違い

現在の皇室会議は、内閣総理大臣が議長を務め、成年皇族2名（男女問わず）、国会衆参両院正副議長、最高裁判所長官、宮内庁長官等が議員として参加するという点で、皇族会議とは大きく異なります。

皇族会議の開催事例

皇族会議では、皇族の身分に関する事項や摂政の設置など、多岐にわたる議題が扱われました。以下に、過去に開催された皇族会議の事例をいくつか紹介します。

大正9年(1920年)5月15日：皇族の降下に関する施行準則についての会議

皇太子裕仁親王（昭和天皇）が成年皇族として初めて皇族会議に参列。「皇族ノ降下ニ関スル施行準則ノ件」について、皇族会議令第9条に基づき、採決の必要がないとの意見が出され、議長により決定されました。
大正9年(1920年)7月20日：芳麿王に関する会議

「勲一等芳麿王殿下ニ家名ヲ賜ヒ華族ニ列セラルルノ件」について審議。士官学校在学中の臣籍降下は不穏当であり、少尉任官後に延期すべきとの意見が出されました。
大正10年(1921年)11月25日：摂政設置に関する皇族会議

大正天皇の疾病により、皇太子裕仁親王を摂政に設置することが議決されました。この議決は、後の枢密院会議でも全会一致で可決されました。
大正12年(1923年)10月23日：邦久王に関する会議

「勲一等邦久王殿下ニ家名ヲ賜ヒ華族ニ列セラルルノ件」が審議され、原案通り可決されました。
大正15年(1926年)1月27日：皇族就学令の修正提案に関する会議

皇族就学令案について、男子皇族が陸海軍の学校に転学する現状に合わせて修正意見が出されましたが、賛成を得られず原案が可決されました。
大正15年(1926年)7月8日：皇室陵墓令案及び皇族後見令案及び皇族遺言令案に関する会議

皇室陵墓令案、皇族後見令案、皇族遺言令案が審議され、それぞれ可決されました。
大正15年(1926年)11月29日：皇室裁判令案及び博信王に関する会議

皇室裁判令案と「勲一等博信王殿下二家名ヲ賜ヒ華族ニ列セラルルノ件」が審議され、いずれも可決されました。
昭和3年(1928年)7月11日：藤麿王、萩麿王に関する会議

藤麿王・萩麿王に各人の家名を賜い華族に列する件について、いずれも原案が可決されました。
昭和6年(1931年)3月26日：邦英王臣籍降下に関する会議

邦英王（香淳皇后の実弟）の臣籍降下に関する議事が、評決参加辞退者を除く議員全員の一致により可決されました。
昭和11年(1936年)3月20日：博英王、正彦王に関する会議

「勲一等博英王殿下二家名ヲ賜ヒ華族ニ列セラルルノ件」及び「勲一等正彦王殿下二家名ヲ賜ヒ華族ニ列セラルルノ件」が審議され、それぞれ可決されました。
* 昭和16年(1941年)7月7日：皇室親族令改正についての会議

皇室親族令改正について、その附式中に諸儀を節略し得る明文を設けることが議決されました。これが日本史上最後の皇族会議となりました。

皇族会議は、時代の変化とともに役割を終えましたが、その歴史は日本の皇室制度を理解する上で重要な要素の一つと言えるでしょう。

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