益富壽之助

益富壽之助：薬学と鉱物学の両分野で活躍した生涯

益富壽之助（ますとみ かずのすけ、1901年6月3日-1993年3月10日）は、日本の薬学と鉱物学の両分野で顕著な業績を残した人物です。京都府で生まれ、京都薬学専門学校（現京都薬科大学）卒業後、薬局経営のかたわら、京都薬科大学、立命館大学、大阪大学で講師を務めました。薬学博士の学位を取得した彼の専門性は、薬学にとどまりませんでした。

鉱物学への貢献: 1932年、益富壽之助は日本鉱物趣味の会（現日本地学研究会）を創設し、その代表として組織を牽引しました。この活動は、日本の鉱物学研究の発展に大きく寄与することになります。彼は、鉱物研究の普及にも尽力し、数多くの研究者や愛好家を育成しました。特に、正倉院に所蔵されている石薬の調査・研究は、歴史的にも貴重な業績として高く評価されています。

新鉱物の発見: 1974年には、滋賀県で発見された新鉱物が「益富雲母 (masutomilite)」と命名されるという栄誉に浴しました。これは、彼の鉱物学への貢献が国際的に認められた証と言えます。この発見は、彼の研究活動がいかに独創的で、学術的に重要なものであったかを示すものです。

地学研究の発展: 1973年には、日本地学研究会館を設立し、1993年には財団法人益富地学会館へと発展させました。これは、彼の鉱物学、そして地学研究への情熱と、その発展への貢献を象徴する出来事です。この会館は、現在も地学研究の拠点として重要な役割を果たしています。

教育者としての面: 大学講師としての経験に加え、益富壽之助は、数多くの著書を執筆しました。彼の著作は、一般向けに分かりやすく書かれており、多くの人々に鉱物学や地質学への関心を高めました。『原色岩石図鑑』『鉱物：やさしい鉱物学』などは、現在でも地学愛好家にとってバイブル的存在です。これらの著作を通じて、彼は教育者としても大きな貢献を果たしました。

晩年と受賞: 1993年2月、自宅で倒れて緊急入院するも、回復することなく同年3月10日に91歳で亡くなりました。彼の死は、日本の薬学界と鉱物学界に大きな損失をもたらしました。長年の功績に対し、紫綬褒章、京都市教育功労賞、櫻井賞（日本鉱物学会）、京都府文化特別功労賞など数々の賞を受賞。没後には、勲四等旭日小綬章、従五位が追賜され、日本地質学会功労賞も贈られました。

まとめ:益富壽之助は、薬学と鉱物学の両分野にわたる多大な貢献により、日本の科学技術の発展に大きく寄与しました。教育者、研究者、そして普及活動家としての彼の功績は、現在も人々に影響を与え続けています。彼の生涯は、科学への飽くなき探究心と、その成果を社会に還元しようとする強い意志を体現した、まさに輝かしいものでした。彼の功績は、これからも日本の科学史に刻まれるでしょう。

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