益富雲母

益富雲母：独立性が揺らぐ希少鉱物

益富[雲母]は、1976年、日本の鉱物学者原田一雄氏らによって滋賀県田ノ上山で発見された、日本産の新鉱物です。発見地であるペグマタイトから産出したこの鉱物は、その特異な化学組成と結晶構造から、鉱物学の世界に大きな注目を集めました。

化学組成と結晶構造

益富雲母の化学組成は(K,Rb)(Li,Mn,Al)3(AlSi3O10)(F,OH)2と表されます。これは、カリウム(K)やルビジウム(Rb)といったアルカリ金属、リチウム(Li)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)といった金属元素、そしてケイ素(Si)と酸素(O)から構成されるケイ酸塩鉱物であることを示しています。さらに、フッ素(F)や水酸基(OH)も含まれています。結晶構造は単斜晶系に属し、雲母グループに分類されます。雲母グループは、層状構造を持つケイ酸塩鉱物の大きなグループであり、益富雲母はその中でも特に珍しい組成を持つ鉱物として知られています。

命名の由来

益富雲母という名前は、日本の薬学者であり、鉱物学者でもあった益富壽之助氏の功績を称えて命名されました。益富氏は、日本の鉱物学の発展に大きく貢献した人物であり、その業績をたたえるために、この新鉱物が彼の名にちなんで命名されたのです。

独立性の問題：チンワルド雲母との関係

益富[雲母]]の発見当初は、チンワルド雲母]の二価鉄を二価マンガンに置換したものと考えられていました。しかし、1998年の[雲母超族の命名規約改訂により、チンワルド雲母はシデロフィル雲母]とポリリシオ[雲母]の[[固溶体とされ、独立種としては消滅しました。

この改訂により、益富雲母の分類も再検討されることとなりました。現在の理解では、益富雲母はKMn2+2Al(Al2Si2O10)(OH)2組成の雲母とポリリシオ雲母の固溶体とみなされています。しかし、2018年現在、前者にあたるKMn2+2Al(Al2Si2O10)(OH)2組成の雲母は発見されていません。そのため、益富雲母は独立種として扱われていますが、その独立性は依然として議論の的となっています。今後、同様の組成を持つ鉱物が発見されるか、あるいは既存の鉱物との関係性がより明確になるまで、益富雲母の独立性は不安定な状態が続く可能性があります。

まとめ

益富雲母は、その希少性と独立性の問題から、鉱物学において非常に興味深い鉱物です。今後も、新たな研究によって、その化学組成、結晶構造、そして地質学的意義に関する理解が深まっていくことが期待されます。このユニークな鉱物の研究は、地球科学における様々な謎を解き明かす鍵となるかもしれません。発見から既に数十年が経過していますが、益富雲母は研究者たちを魅了し続け、今後の更なる研究が待たれています。

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