益田町警察

益田町警察の歴史とその背景

益田町警察（ますだちょうけいさつ）は、島根県美濃郡の益田町において1948年から1951年にかけて運営されていた自治体警察です。日本において地方警察の設立が進められる中、益田町にもこの流れが影響を及ぼしました。自治体警察の設置は、警察の地方分権を実現するための重要なステップであり、この法律が成立したのは1947年のことでした。

設立の経緯

森林や山々に囲まれた益田町においても、警察の機能は重要でありました。警察法の成立に伴い、既存の警察署は解体され、人口5,000人以上の町には自治体警察が設置されることとなりました。これにより、町の治安を維持し、地域に根ざした警察活動が期待されたのです。益田町では1948年2月から準備が始まり、同年3月7日に正式な運営が開始されました。

当初は国家地方警察の庁舎を利用し、その後、1949年には新しい庁舎が役場の後ろに完成しました。益田町警察の職員は、警察長をはじめ、警部補1名、巡査部長2名、巡査25名、その他職員6名の計35人から構成されていました。

経済的な負担と運営の課題

しかし、自治体警察の経費は各自治体が負担することとなり、益田町の財政に大きな圧力をかけました。このことは、警察機能の維持に必要な資金を確保することが困難となり、結果として治安維持に支障をきたすことが少なくありませんでした。また、自治体警察と国家地方警察、他の自治体警察との連携が不十分であったため、警察によって対応できない事件が発生し、住民からの不満が高まる事態が頻発しました。

益田町では、1948年12月の議会で「民主警察の再建」や「警察行政の公正化」といった議題が話し合われ、一時は警察長の罷免を求める声まで上がりました。こうした背景から、益田町警察は住民の信頼を得ることができず、運営は厳しい状況に置かれていました。

益田事件とその影響

1950年に発生した益田事件は、益田町警察の運営に大きな影響を及ぼしました。この事件に際して、益田町警察は単独での対応が難しくなり、島根県内から約1/3の警察官が応援として動員される事態となりました。事件への対応により、予算の約1/4を消費することとなり、その結果、自治体警察の機能不全が地域住民に明らかとなったのです。

警察法の改正と廃止

1951年6月、警察法が改正され、住民投票によって自治体警察の廃止が可能となりました。この改正を受けて、益田町は同年7月5日に臨時議会を開き、多数決によって住民投票の実施を決定しました。そして、1951年8月10日には、島根県内で初となる住民投票が行われ、その結果、賛成票が圧倒的に多い結果となりました。賛成4,200票、反対1,134票という結果により、益田町警察の廃止が決定しました。

それに伴い、益田町警察は同年9月30日に正式に廃止され、国家地方警察島根県美濃地区警察署に統合されました。このように、益田町警察の歴史は、その短い存在期間の中で多くの課題に直面し続けたことがわかります。地域に根差した警察の形を模索し続けた益田町警察の取組みは、地方警察の運営に関する貴重な教訓を今に伝えています。

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