盤珪永琢

盤珪永琢（ばんけい ようたく/えいたく）

盤珪永琢（1622年 - 1693年）は、江戸時代前期に活躍した臨済宗の僧侶です。彼は「不生禅」という独自の禅思想を提唱し、その教えを分かりやすい言葉で広めました。大名から庶民まで、身分を問わず多くの人々が彼の教えに触れ、弟子となった者は五万人を超えると言われています。

生涯

盤珪は、元和8年（1622年）に儒医・菅原道節の三男として播磨国（現在の兵庫県姫路市）に生まれました。幼い頃に父を亡くし、兄のすすめで地元の学校で儒学を学びますが、「大学」の一節である「明徳を明らかにする」という意味が理解できず、禅僧に尋ねるように勧められます。17歳で臨済宗の僧侶に師事し、永琢という法名を与えられ、厳しい修行に励みます。

しかし、修行を重ねても納得のいく答えを得られず、念仏や断食など様々な修行を試みます。その結果、体を壊し死にかけるほどの状態になりますが、その中でついに「不生の仏心」に目覚めます。「一切のことは生まれず、滅びることなく、本来完璧に備わっている」という悟りを開いたのです。

承応3年（1654年）からは備前国の寺に住み、岡山藩士などを教化します。その後、平戸の松浦鎮信をはじめとする諸大名が彼の教えに帰依しました。姫路の龍門寺や江戸の光林寺を開山し、寛文12年（1672年）には勅命により京都妙心寺の住持に就任します。龍門寺を中心に各地を巡り、方言混じりの親しみやすい言葉で庶民に仏法を説きました。

元禄6年（1693年）、71歳で没しました。没後、大法正眼国師の号を贈られています。彼の教えは門弟たちによって「盤珪禅師語録」としてまとめられ、後世に伝えられました。

不生禅

盤珪の唱えた不生禅は、難解な禅の教えを平易な言葉で説いたものです。彼は、人は生まれながらに仏心を備えており、その仏心に気づくことこそが悟りであると説きました。彼の教えは、当時の人々に大きな影響を与え、禅宗の普及に貢献したと評価されています。

エピソード

盤珪の人となりを表すエピソードとして、短気な性格に悩む僧侶とのやり取りが残っています。僧侶は、生まれつきの短気な性格を直せないと相談しますが、盤珪は「短気は生まれつきのものではなく、何かの縁によって現れるものだ」と諭します。そして、「人々は皆、親から仏心という最高の宝を授かっている」と説き、短気な性格も、その仏心に気づくことで克服できると教えました。このエピソードは、盤珪の教えが、人々の心のあり方や生き方そのものに深く関わっていたことを示しています。

盤珪禅師は、その生涯を通して、人々が自らの内なる仏心に気づき、より良く生きるための道を示しました。彼の教えは、現代においても私たちに多くの示唆を与えてくれるでしょう。

年表

1622年（元和8年）：誕生
1632年（寛永9年）：父と死別
1639年（寛永16年）：雲甫和尚に師事
1654年（承応3年）：備前国三友寺に住す
1672年（寛文12年）：京都妙心寺の住持に就任
1693年（元禄6年）：死去

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