直根性

直根性（ちょっこんせい）

植物の根の成長様式の一つで、主根が明確に分枝することなく、地中へ向かってまっすぐに深く伸び続ける性質を指します。側根は発生しますが、主根のような太さや勢いは持たないことが一般的です。この性質を持つ植物は、地中の深い場所から水分や養分を効率よく吸収することができます。

代表的な例としては、ダイコンやゴボウなど、食用となる太い根がまっすぐ下に伸びる野菜が挙げられます。また、チューリップやヒヤシンスのような球根植物も、一本一本の根が分枝せずに地中へ伸びるため、直根性として扱われることがあります。

直根性の植物には、栽培において注意すべき点があります。根の先端にある成長点が損傷したり、途中で根が切断されたりすると、再生が非常に困難となるためです。この性質から、これらの植物は一度根付いた場所からの移植を非常に嫌う傾向があります。

栽培における注意点

移植の際に根を傷つけないためには、以下のような対策が推奨されます。

実生の場合: ケシ科、マメ科、アカバナ科などの植物では、種子を栽培したい場所に直接まく「直播き（じかまき）」が最も適しています。もし苗を育ててから植え付ける必要がある場合は、本葉が2枚程度出たばかりのごく小さな苗のうちに、根鉢を崩さないように細心の注意を払って速やかに定植を完了させることが重要です。

球根類: ダリア、カンナ、ラナンキュラスなど、比較的移植に強い一部の例外を除き、多くの直根性を持つ球根植物は移植を嫌います。栽培場所に直接球根を植え付けるのが基本です。鉢植えで育ててから植え替える場合は、鉢から中身を土ごと根鉢の形を保ったまま慎重に取り出し、そのまま植え穴に収める方法が推奨されます。根鉢を崩すと、その後の生育が悪くなる可能性があります。

樹木における直根性

樹木の中にも直根性を示す種類があります。しかし、同じ種類の樹木であっても、種子から育てた実生苗と、枝などを土に挿して発根させた挿し木苗では、根の構造が異なる場合があります。

挿し木苗の場合、主根が形成されにくく、代わりに枝から不定根（ふていこん）が多く発生して成長します。この不定根は一般的に側根に似た性質を持つため、主根を持つ実生苗に比べて根が地中深くに伸びにくく、根張りが比較的地表近くに限定される傾向があります。

スギなどの人工林で挿し木苗が多く用いられる場合、このような根の張り方の違いが問題となることがあります。根が地中深くの硬い層まで到達しにくいため、大雨などにより地盤が緩んだ際に、根が地表近くの土壌を保持する力が弱くなり、土砂崩れのリスクを高める要因の一つとなる可能性が指摘されています。

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