ケシ科

ケシ科（Papaveraceae）について

ケシ科は、双[[子葉植物]]に属する科で、ケシ、ヒナゲシ、ハナビシソウ、ケマンソウ亜科など、約40属800種を含む多様なグループです。

特徴

ケシ科の植物は、一年草または多年草で、一部は小型の低木として生育します。葉の形は様々で、羽状に深く切れ込みが入ったものや、掌状に裂けているもの、単葉や複葉などがあります。葉の付き方も、茎から直接出るものや葉柄を持つもの、互生、対生、輪生など多様です。また、根元から葉を出す種もあります。

花は両性で、放射相称、十字相称、または左右相称になります。単独で咲くものもあれば、総状花序や集散花序を形成するものもあります。萼は通常2枚、花弁は4枚が基本ですが、さらに多いものや全くないものも存在します。雄しべは2個、4個、または多数あり、子房は上位で、通常は1室ですが、複数の室に分かれるものもあります。種子は非常に小さく、いわゆる「けし粒」と呼ばれるものです。

タケニグサのように大型に育つ種でも、実生苗の子葉はごく小さく、発芽は遅いものの、春から初夏にかけて急速に成長します。

分布と生態

ケシ科の植物は、北半球の温暖帯から亜寒帯にかけて広く分布しています。

薬理作用と毒性

ケシ科の植物には、モルヒネをはじめとする強力なオピオイド鎮痛剤や、プロトピン、サンギナリンなどの麻薬、麻酔薬の成分が含まれています。これらの成分は医療に不可欠ですが、同時に有毒でもあり、そのままの使用は危険です。これらの成分を生成できるのはケシ科の植物のみであり、現代医学において重要な役割を担っています。

日本には、オサバグサ、タケニグサ、クサノオウ、ヤマブキソウ、リシリヒナゲシ、コマクサなどが自生し、ナガミヒナゲシ、アツミゲシなどが帰化しています。タケニグサに関しては、日本原産の種と中国大陸・台湾原産の種があり、それぞれ別の種類として分類されています。

分類

ケシ科は、以前はキンポウゲ科やアブラナ科と関連があると考えられていましたが、近年の分子系統学的研究により、アブラナ目とは直接的な関係がないことが明らかになりました。現在では、APG植物分類体系においてキンポウゲ目に分類されています。

ケシ科には、以下の属が含まれます。

アザミゲシ属 Argemone
クサノオウ属 Chelidonium
キケマン属 Corydalis
コマクサ属 Dicentra
シラユキゲシ属 Eomecon
ハナビシソウ属 Eschscholzia
ツノゲシ属 Glaucium
ハンネマニア属 Hunnemannia
ヤマブキソウ属 Hylomecon
タケニグサ属 Macleaya
メコノプシス属 Meconopsis
ケシ属 Papaver
オサバグサ属 Pteridophyllum
サンギナリア属 Sanguinaria

進化

花の形態がキンポウゲ科（多数の心皮と雄しべを持つ）や、フウチョウソウ科やアブラナ科（少ない雄しべと2心皮の子房を持つ）に類似しているため、ケシ科はこれらのグループを結ぶ存在と考えられてきました。しかし、分子系統学的研究により、ケシ科はアブラナ目とは直接的な関係がないことが明らかになっています。

参考文献

大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 2』、2016年、平凡社

関連項目

ケマンソウ亜科

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