相模ダム

相模ダムの概要

相模ダムは、神奈川県相模原市緑区に位置する重要な重力式コンクリートダムであり、一級河川である相模川に建設されています。ダムの高さは58.4mで、神奈川県企業庁が管理する補助多目的ダムとして、多様な目的で利用されています。相模ダムは、日本の河川総合開発事業の初期の一例であり、そのダム湖、すなわち相模湖は、多くの神奈川県民にとって大切な水源となっています。

歴史的背景

相模川は歴史的に、水害に対する対策が急務であり、特に横浜市や湘南地域では人口の急増に伴い、新たな水道供給が求められていました。このような背景から神奈川県は1933年に相模川の利水計画の調査を開始。1935年には「河水統制計画案」が採用され、相模川を含む複数の河川に対して「河水統制事業」の立案がなされました。

相模ダムの建設が本格的に始まったのは1938年で、上水道や工業用水道の供給だけでなく、貯水を利用した水力発電も目的としていました。第二次世界大戦後には、日本経済の復興に必要不可欠な施設として活躍を続けました。特に、1947年には昭和天皇が訪問されるなど、その重要性が改めて認識されています。

建設の困難と軍の介入

1941年から建設が始まったものの、196戸の住居が水没するため、多くの住民が反対運動を展開しました。しかし、戦時中の軍が水供給の必要性から強力に工事を推進。反対する住民に対して陸軍の圧力が加えられ、水没補償が1938年から始まっていましたが、1940年にはその妥結が行われ、本体工事が進められました。戦争や水害の影響により工事は中断されることもありましたが、最終的には1947年に相模ダムが完成しました。

建設には約360万人が動員され、日本人のみならず、多くの朝鮮人や中国人労働者も携わりました。しかし、その過酷な環境下で、命を落とす者も多く存在したとのことで、現在でも彼らに対する追悼が行われています。

ダムの目的と役割

相模ダムは、上水道と工業用水の供給、かんがい用水の確保など、地域の水資源の管理を行っています。また、相模発電所での水力発電を担いつつ、2740haもの農地へのかんがい用水の供給も行っています。完成後、1951年にはダムのかさ上げ工事が行われ、より効率的な水管理が進められました。1966年には洪水調節機能を持つ城山ダムも完成し、相模川流域における水資源管理は強化されています。

さらに、相模ダムは相模湖を形成し、1955年には相模湖町（現・相模原市緑区）として自治体が発足するほど地域に密接した存在となりました。1964年の東京オリンピックではカヌー競技の開催地にもなり、観光地としても貢献しています。近年、堆砂の進行が問題視されていることを受け、管理当局は定期的な浚渫作業を実施し、洪水時の自然流出対策を講じています。

相模ダムの役割は、今もなお神奈川県全体における重要な水源として、また地域の象徴的存在として不可欠であり、これからもその重要性は変わらないでしょう。

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