相模書房

相模書房：日本の建築出版を牽引した出版社

相模書房は、東京都中央区銀座に本社を置く日本の出版社です。土木・建築書協会会員として、主に建築に関する書籍を刊行しています。1936年（昭和11年）の創業以来、日本の建築界に多大な貢献を果たしてきた歴史を持つ出版社と言えるでしょう。

創業から建築専門出版社への転身

相模書房は、小田原相海漁業組合の理事長であった鈴木二六の出資により設立されました。初代社長は小林美一が務め、当初は日本橋に社屋を構え、里見弴や野上弥生子といった作家たちの随筆などを中心に出版していました。しかし、編集者の引頭百合太郎が平凡社で百科事典の編纂に携わっていた経験を生かし、建築関係者へのアプローチを強化。岸田日出刀に随筆の執筆を依頼したことが転機となり、その作品『甍』や『縁』がヒットしたことで、相模書房は建築専門出版社へと転換していきました。

岸田日出刀との協働と戦時中の出版活動

岸田日出刀は相模書房の中心的な著者・企画者として活躍し、『過去の構成』『京都御所』『ナチス独逸の建築』など多くの写真集や書籍を刊行しました。同時に、若手建築研究者への執筆機会の提供にも尽力し、人材育成にも貢献しています。第二次世界大戦中は、出版社の整理統合により乾元社名義で出版活動を行い、『建築学者伊東忠太』（1945）、『焦土に立ちて』（1946）などを刊行しました。

戦後の発展と建築界への影響

戦後、相模書房は建築専門出版社としていち早く活動を再開。西山夘三『これからのすまい』、浜口ミホ『日本住宅の封建性』、吉阪隆正『住居学』といった、戦後の住宅問題や建築思想を反映した重要な書籍を世に送り出しました。1950年には佐藤弘が社長に就任。1970年代に入社した神子久忠と小川格の二人が編集の中核となり、長谷川堯『神殿か獄舎か』を始め、西沢文隆、上松祐二、石山修武、佐々木宏といった建築家たちの著作を数多く出版。これらの書籍は、当時の建築界に大きな衝撃を与え、日本の建築思想や設計思想に多大な影響を与えたことは間違いありません。また、『これからのすまい』と『都市廻廊』は毎日出版文化賞を受賞するなど、高い評価を得ています。

多彩な出版物

相模書房は、建築に関する専門書だけでなく、建築家の作品集、建築史、建築理論、建築評論、住宅関連書籍など幅広いジャンルの書籍を刊行してきました。戦前の文学作品から始まり、戦後の建築専門出版社としての確固たる地位を築き、現代に至るまで建築分野における重要な出版社として存在感を示し続けています。

まとめ

相模書房は、創業以来、日本の建築文化の発展に大きく貢献してきた出版社です。文学出版から建築専門出版社への転身、戦時中の活動、そして戦後の発展と、その歴史は日本の建築界の歴史と深く関わっています。数多くの名著を生み出し、建築家や研究者たちの活動を支え、日本の建築文化を豊かにしてきた相模書房の功績は、今後も高く評価されるべきでしょう。

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