相沢進

相沢進（あいざわすすむ、1930年 6月9日 - 2006年 5月18日）は、ミクロネシア連邦チューク諸島（旧称トラック諸島）のトール島を出身地とする、プロ野球選手（投手）そして政治家として波乱に富んだ生涯を送った人物です。

生い立ちと野球との出会い

相沢は、1918年に日本から当時の日本の委任統治領であったトラック諸島トール島へ移住した父・庄太郎と、現地の酋長の娘であった母・リサ（ノツムール）の間に、次男として生まれました。幼少期を故郷のトール島で過ごし、後にミクロネシア連邦の初代大統領となるトシオ・ナカヤマ氏とはこの頃からの友人でした。日本から伝来し、島で人気のスポーツだった野球に、幼い頃から運動能力に優れていた相沢は自然と親しみ、夢中になっていきます。

戦中・戦後の日本へ

太平洋戦争が激化し、トラック諸島の民間人に帰国勧告が出されると、相沢は1942年に父の故郷である日本の神奈川県藤沢市へ単身疎開することになります。湘南中学に入学し、終戦を日本で迎えました。戦後、父・庄太郎はトール島に母と娘たちを残し、単身日本へ戻ります。湘南高校を卒業した相沢は、商船学校への進学を断念し、晴海の倉庫会社に就職しました。しかし、この頃から再び野球に打ち込み始め、軟式野球チームで活躍。シュートやカーブを武器に、全国大会で二度の準優勝を果たすほどの好成績を収めます。その活躍は、当時大阪タイガースの監督を務めていた若林忠志氏の目に留まりました。若林氏の紹介がきっかけとなり、相沢は1950年に創立間もない毎日オリオンズ（現在の千葉ロッテマリーンズ）に入団。契約金20万円、月給5万円という条件でのプロ野球選手生活が始まりました。

プロ野球選手として

プロの世界に入ったものの、当時の野球選手の収入だけでは生活は厳しく、相沢はシーズンオフには職業安定所を通じて仕事の斡旋を受けたり、貨車から材木を降ろすといった副業に従事しながら生計を立てました。一軍に初めて昇格したのは1953年ですが、出場はわずか3試合に留まり、白星を挙げることはできませんでした。

1954年、高橋ユニオンズ（後にトンボユニオンズと改称）へ移籍します。ここで5月6日の阪急ブレーブス戦に2番手として登板し、5回1/3を1失点に抑える好投を見せ、プロ入り初勝利を飾りました。このシーズンは3勝（5敗）という成績でしたが、これはチーム内で4番目に多い勝ち星でした。翌1955年には4勝（10敗）と勝ち星を増やしますが、1956年は1勝に終わります。高橋ユニオンズは1957年シーズンの開幕を前に、大映スターズとの合併により事実上解散となり、他の球団からの誘いを受けることがなかった相沢は、プロ野球選手としてのキャリアを終えることになりました。彼が引退するまで、日本のプロ野球において太平洋諸島出身の選手は彼一人であり、1980年にトニー・ソレイタが入団するまでその状況は続きました。高橋ユニオンズ時代のチームメイトからは、麻雀牌の二筒を横に倒したような特徴的な大きな目に因み、「リャンピンさん」という愛称で親しまれていました。

故郷での新たな道

1958年、相沢は再び母が暮らす故郷のトール島へ渡ります。しかし、ミクロネシアの市民権を取得するまで正式な職業に就くことが叶わず、ひたすらコプラ（ココナッツの胚乳）の皮を剥き続けるという苦しい日々を送りました。33歳で市民権を取得すると、実業家・森小弁氏の孫娘であるユリエさんと結婚します。市民権取得後、トール島で小さな雑貨店を開いたことを皮切りに、事業を拡大。鰹節工場や船の貸し出しなども手掛け、その商圏は他の島々にも広がっていきました。相沢の経営する商店では、多くのトール島出身者が雇用され、実業家としての活動の傍ら、自身の財産を投じて島民への援助も行いました。その活動は次第に島の人々からの信頼を集め、やがて相沢はトール島の大酋長に選出されるに至ります。当初は相沢の活動に懐疑的だった他の島の酋長たちも、次第に彼に信頼を寄せるようになりました。その後、彼はチューク州首長会議の議長も務め、故郷の発展に貢献しました。

晩年

2006年 4月13日には、千葉マリンスタジアムで行われた千葉ロッテマリーンズ対福岡ソフトバンクホークス戦で始球式に登板し、日本のファンに元気な姿を見せました。しかし、そのわずか一ヶ月後の同年5月18日未明、ミクロネシアにて75歳でその生涯を終えました。相沢の甥には、駐日ミクロネシア連邦大使を務めたジョン・フリッツ氏がいます。

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