相良氏法度

相良氏法度とは

相良氏法度（さがらしはっと）は、戦国時代の肥後国（現在の熊本県南部）を治めた相良氏が制定した分国法です。これは、一連の法令や掟をまとめたもので、相良氏の統治下における社会秩序の維持、紛争の解決、領民の生活規範などを目的としていました。後世、「相良氏法度」と呼ばれることが多いですが、当時は「申定条々」という壁書（かべがき / へきしょ）の集成であり、「相良氏壁書」とも呼ばれていました。

法度成立の背景

相良氏法度は、第12代当主である相良為続から第17代当主である相良晴広までの4代にわたって、それぞれの当主が定めた法が追加・修正されることで成立しました。特に重要なのは、為続法（7ヶ条）、長毎法（13ヶ条）、晴広法（21ヶ条）の3つであり、これらを合計すると41ヶ条になります。

為続法: 明応2年（1493年）に相良為続によって定められたとされます。ただし、これは後世の史家が便宜上分けたもので、実際には「為続・長毎両代之御法式」としてまとめられていたものが元になっています。
長毎法: 相良長毎が13ヶ条を追加したもので、正確な制定年は不明ですが、長毎の治世期間から1518年以前に成立したと考えられています。
晴広法: 天文24年/弘治元年（1555年）に相良晴広が21ヶ条を制定したもので、為続法・長毎法と合わせて相良氏法度を構成しています。

なお、大永の内訌を統一した相良義滋も義滋法式などを定めていますが、これらは相良氏法度には含まれていません。

法度の内容と特徴

相良氏法度には、土地売買の慣行や銭貨の基準など、当時の社会や経済状況を知る上で貴重な情報が含まれています。例えば、第5条には銭貨に関する記述があり、戦国時代の貨幣経済を研究する上で重要な史料となっています。また、武士道の精神や道徳律が随所に盛り込まれており、単なる法令以上の意味を持っていました。晴広法には一向宗の禁制に関する条項が含まれている点も注目されます。

後世への影響

相良氏法度は、人吉藩において江戸時代まで一部の条項が用いられました。これは、相良氏の統治が江戸時代にも引き継がれ、法度が一定の影響力を持ち続けたことを示しています。

まとめ

相良氏法度は、戦国時代の相良氏が領国を統治するために定めた分国法であり、当時の社会、経済、文化を知る上で貴重な史料です。為続、長毎、晴広の三者によって定められた条文は、単なる法令にとどまらず、武士道や道徳律を含むものであり、後世にも影響を与えました。

参考文献
熊本県教育会球磨郡教育支会 編『球磨郡誌』
安野真幸「相良氏法度十八条の世界」（PDF）
安野眞幸「「相良氏法度」の研究(一)」（PDF）
安野眞幸「『相良氏法度』の研究(二) : 「スッパ・ラッパ考」」（PDF）
安野真幸「「買免」とは何か売買考」（PDF）
* 本多博之「戦国期社会における銭貨と基準額:筑前・豊前両国を中心に」（PDF）

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