相良義滋

相良義滋：戦国時代の肥後を駆け抜けた知勇兼備の名将

相良義滋（さがら よししげ）は、戦国時代の肥後国（現在の熊本県南部）において、相良氏の第16代当主として活躍した人物です。内乱の収拾、領土の拡大、明との貿易の振興など、相良氏を戦国大名へと押し上げた功績は大きく、その生涯は波乱に満ちています。

生涯

家督相続

延徳元年（1489年）、相良氏の本拠地である人吉城で、第13代当主・相良長毎（さがら ながつね）の庶長子として生まれました。兄に長祗（ながただ）がいましたが、庶子であったため、家督を継ぐ立場にはありませんでした。しかし、大永4年（1524年）に家臣の犬童長定（いんどう ながさだ）が反乱を起こし、長祗を追放して家督を奪うという事件が発生します。

相良氏一族と家臣団は長定の簒奪を非難し、長毎の庶長子である長唯（ながただ、義滋の初名）を擁立することを決定しました。大永6年（1526年）には、長唯を支持する勢力が人吉城を奪還し、長唯が家督を相続することになります。

長唯の治世

家督を相続した長唯は、まず内紛の収拾に尽力しました。日向国の北原氏が相良家の混乱に乗じて人吉城を包囲しましたが、長唯は智略を駆使してこれを撃退します。また、長定に組して謀反を起こした犬童氏の鎮圧にも成功し、家中の安定化に大きく貢献しました。

内政面では、八代に徳淵湊（とくぶちみなと）を開き、明との貿易を振興しました。また、鷹峯城（たかがみねじょう）と城下町を整備し、分国法を定めるなど、領国の発展に尽力しました。

戦国大名へ

長唯は、周辺の勢力との外交にも力を入れました。阿蘇氏や名和氏と連携し、大友氏の勢力拡大に対抗しました。また、周防の大内氏とも友誼を結び、貿易の安定化を図りました。これらの政策により、相良氏は戦国大名としての地位を確立していきました。

天文14年（1545年）、朝廷から従五位下・宮内大輔に叙任され、「義」の字を与えられて義滋と改名しました。これは、相良氏が朝廷からも認められた戦国大名になったことを意味します。

天文15年（1546年）に家督を嫡男の晴広（はるひろ）に譲り、隠居しました。その直後に病によって亡くなりました。享年58歳。

人物

義滋は、智勇に優れ、内政手腕に長けた人物として知られています。内紛で疲弊した相良氏を再興し、戦国大名へと押し上げた功績は大きく、領民からも慕われていました。

八代の徳淵湊を開いて明との貿易を行ったことは、相良氏の経済力を高める上で大きな役割を果たしました。また、鷹峯城と城下町の整備は、領国の政治・経済の中心地としての八代の発展に大きく貢献しました。

義滋が制定した分国法は、領内の秩序維持に役立ち、相良氏の支配体制を強化する上で重要な役割を果たしました。これらの業績により、義滋は相良氏の歴史において、特に重要な人物の一人として位置づけられています。

まとめ

相良義滋は、戦国時代の肥後国において、相良氏を戦国大名へと押し上げた名将です。内乱の収拾、領土の拡大、明との貿易の振興など、その功績は多岐にわたり、相良氏の歴史に大きな足跡を残しました。彼の生涯は、戦国時代の激動と、その中で生き抜いた武将たちの姿を今に伝える貴重な資料となっています。

もう一度検索