県 (中華人民共和国)

中国の県：地方行政の要

中国の県（xiàn）は、省の下に位置する重要な行政区画です。1949年の建国以来、中国の地方行政を支える基盤として、その役割を担ってきました。本稿では、県の歴史、組織、役割、そして近年における変化について詳細に解説します。

歴史と変遷

中国の県は、1949年の建国時に中華民国の行政督察区の県を引き継ぐ形で誕生しました。当初は専区（行政督察専区）の管轄下にありましたが、現在は地区または地級市（地級行政区）の管轄下にあります。2002年末には2860の県級行政区画が存在し、平均人口は約63万人でした。しかし、工業化と都市化の進展に伴い、県級市の数は増加し、2007年末には県の数は減少しました。少数民族の自治県も存在し、その数は117に上ります。なお、海南省のように、省に直属する県も存在します。

行政機構の組織

県の行政機構は「県政府」と呼ばれ、複数の部局から構成されます。政府の組閣形式によって、政府組閣局と直属機関の2種類に分けられます。さらに、行政機関と事業機関に分類され、行政機関が中心的な役割を担います。人員編制も行政編制と事業編制の2種類に分けられています。

常設の部局

2000年以降の県政府では、多くの局が政府組閣部門に常設されています。小規模な県では約20個、大規模な県では35～40個の局が設置されています。主な常設の部局としては、財政局、税務局（国税と地税は分設）、公安局、建設局、教育局、交通局、衛生局、農業局、文化局（文化、観光、体育局を含む）、司法局、環境保護局、労働局（労働および社会保障局）、商務局、民政局、国土局、科技局、計画生育局、審計局、物価局などがあります。また、検察院と法院も政府組閣に含まれます。一部の省区では、工商管理局や技術監督局などが垂直管理されています。

非常設の部局

非常設の部局は、地域の特性、都市化水準、人口規模、経済発展水準、産業構造などによって設置されます。例えば、農業が盛んな地域では農業局と統合された畜牧局や林業局、沿岸部では海洋漁業局、観光資源が豊富な地域では観光局、穀倉地帯では糧食局などが設置されます。近年では、安全生産の重要性が高まり、安全生産監督局（安監局）が常設されるようになりました。

直属機関

直属機関は、政府組閣局に属さない行政単位です。信訪局のように、すべての県に設置されているものや、環境衛生管理を担当する園林局、環衛局など、計画経済時代の管理機構の名残も残っています。農機局、畜牧局、蔬菜局などは、今日では重要性が低下しているにも関わらず、廃止されずに残っているケースもあります。

事業単位

事業単位は、政府行政の機能を担う単位として、政府機構の管轄下に置かれることが多いです。独立した予算を持つ場合もあり、独立した機構に属する場合もあります。例えば、交通警察隊は県公安局の管轄下にあり、公安派出所は各鎮や経済地区に設置され、独立した事業単位として機能しています。

まとめ

中国の県は、複雑で多様な行政機構を持つ地方行政単位です。その組織構造は、歴史的背景、地域特性、経済発展水準などを反映しており、中国の地方行政の複雑さを示しています。近年では、都市化の進展や安全生産の重要性の高まりなどによって、行政機構の再編や新たな部局の設置が進められています。今後も、中国の社会経済情勢の変化に合わせて、県の役割と組織形態は変化していくものと考えられます。

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