真冬の帰り道 (ザ・ランチャーズの曲)

真冬の帰り道

「真冬の帰り道」（まふゆのかえりみち）は、日本の音楽グループ、ザ・ランチャーズによって1967年11月25日にシングル盤として発表された楽曲である。

ザ・ランチャーズは、当初、著名なミュージシャンである加山雄三のバックバンドとして活動していたが、後に独立して独自のグループとしての歩みを始めた。この「真冬の帰り道」は、彼らがザ・ランチャーズ名義で最初にリリースした記念すべきデビューシングルに位置づけられる楽曲である。

楽曲の制作陣としては、作詞を水島哲が担当し、作曲および編曲は喜多嶋修が手がけている。その音楽性における顕著な特色は、クラシック音楽、特にバロック時代を思わせる、どこか気品と優雅さを感じさせるサウンドプロダクションにある。このバロック調の響きに、誰にでも親しみやすいシンプルなメロディーラインが組み合わさることで、楽曲独特の世界観が構築されている。また、この曲が醸し出す雰囲気は、聴く者によっては北欧の冬景色を連想させるとも評されている。

商業面においては、オリコンが調査する当時のシングルレコードチャートで最高23位という順位を獲得し、いわゆるスマッシュヒットを記録した。これは、グループにとって最初の単独名義での作品として、一定の成功を収めたことを示している。

本シングル盤には、「真冬の帰り道」の他に、カップリング（B面）曲として「北国のチャペル」が収録されている。こちらもメイン曲と同様に、喜多嶋修が作曲・編曲を手がけており、バロック音楽の要素を取り入れたアレンジが施されている。両楽曲とも作詞は水島哲によるものである。収録時間は、「真冬の帰り道」が2分35秒、「北国のチャペル」が2分27秒となっている。

発表から時を経ても、この楽曲は多くのアーティストによってカバーされ、歌い継がれている。主なカバーバージョンとしては、以下のようなものがある。

ジャッキー吉川とブルーコメッツ: 1971年に発表されたアルバム『G.S.R.』に収録されている。原曲のテイストを活かしつつ、彼ら独自のアレンジが加えられている。
スイートポテト: はた金次郎とくり万太郎によるユニットで、1979年2月にシングルとしてリリースした。TBSラジオの番組「夜のドラマハウス」では、この曲を基にしたラジオドラマが制作・放送されたこともある。
伊丹幸雄: 1981年にシングルとして発表。これは、彼がバラエティ番組「オレたちひょうきん族」への出演を通じて再び注目を集め始めた時期に重なり、彼にとっての「再デビュー曲」のような位置づけで紹介されることもあった。
ザ・マイクハナサーズ: 1989年発売のシングル『二人でカンパイ!』に収められたメドレー曲「ブルー・シャトウを君だけに」の一部として歌唱されている。
オレンジ・ペコ: 音楽家・近田春夫が率いる近田春夫&ハルヲフォンのアルバム『リメンバー・グループ・サウンズ』（2008年）に収録された。
キャンディーズ: 1976年に開催されたライブイベント「10,000人カーニバル」で演奏された。当時のライブ音源盤や初CD化の際には未収録だったが、1998年にリリースされたCD-BOX『CANDIES HISTORY 〜Best Selection Box 1973-1978〜』に未発表音源として収録され、その後2008年のCD-BOX『キャンディーズ・タイムカプセル』に収められた『10,000人カーニバルVol.2』の復刻盤にもボーナス・トラックとして追加収録されている。
SMI: 忌野清志郎、坂本冬美、三宅伸治という異色の顔合わせで結成されたユニット。1990年リリースのライブ・ビデオ「ロックの生まれた日」にライブパフォーマンスが収録されている。
吉幾三: 2019年に発表されたカバーアルバム『あの頃の青春を詩う vol.4 グループサウンズ編』に収録された。

「真冬の帰り道」は、その特徴的なサウンドとメロディー、そして後世の多様なアーティストによるカバーを通じて、日本のポピュラー音楽史、特にグループ・サウンズ時代の代表的な楽曲の一つとして、現在も多くの音楽ファンに記憶されている。

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