真昼の暗黒 (映画)

映画『真昼の暗黒』

概要

『真昼の暗黒』は、1956年に今井正監督、橋本忍脚本で制作された日本映画です。原作は、正木ひろしのベストセラー『裁判官　―人の命は権力で奪えるものか―』に基づいており、単独犯が知人4人を共犯者として仕立て上げた冤罪事件を題材としています。この事件は八海事件として知られ、映画はその実際の事件を元にしつつも登場人物名などは変更されています。タイトルは、ソ連での自白強要と粛清を告発したアーサー・ケストラーの同名小説から取られています。製作・公開当時、八海事件は最高裁判所で争われており、映画に対して圧力がかかりましたが、作品は冤罪事件の恐ろしさと警察の杜撰な捜査をリアルに描いており、社会派映画の名作として評価されました。

ストーリー

物語の主人公は青年・植村清治で、婚約者を持つ彼は、突然、身に覚えのない殺人事件の容疑者として逮捕されます。仲間の小島武志が、逮捕後に警察の取り調べで自己の供述を通じて、植村を含む4人を共犯者と証言したためです。警察は執拗な取り調べを行い、植村はその圧力に屈して犯行を自供してしまいます。裁判では、弁護側が供述調書の矛盾を指摘しますが、一審も控訴審も被告全員が有罪となります。最後のシーンでは、植村が母に「おっかさん、まだ最高裁がある！」と叫び、希望を託すところで物語は幕を閉じます。

登場人物

• - 植村清治（演：草薙幸二郎）: 小島の友人で、主演の青年。
• - 小島武志（演：松山照夫）: 真犯人であり、仲間を共犯に仕立てる。
• - 青木昌一（演：矢野宣）: 小島の友人。
• - 宮崎光男（演：牧田正嗣）: 小島の友人。
• - 清水守（演：小林寛）: 小島の友人。
• - 近藤弁護士（演：内藤武敏）: 冤罪事件の弁護士。
• - 永井カネ子（演：左幸子）: 植村の内縁の妻。
• - 山本弁護士（演：菅井一郎）: 法廷での対応を行う弁護士。

制作背景

本作はプロデューサーの山田典吾が企画し、当時進行中の八海事件をテーマに選びました。山田は監督の今井正と相談し、脚本に橋本忍を起用しました。製作チームは実際の事件の現場を訪れ、シナリオを練り上げました。当初、橋本は映画のタイトルを『白と黒』と考えていましたが、最終的にはケストラーの小説にインスパイアを受けたものとなりました。この映画は、冤罪の無惨さを描くことで観客に強い影響を与えることを目指しました。

公開を巡る圧力

公開時には、最高裁判所から制作中止の要求がありました。この圧力にもかかわらず、製作チームは作品を完成させ、かつ自主上映を行いました。その後の反響もあり、映画は非常に高い評価を受けました。

評価と影響

『真昼の暗黒』は、様々な映画賞を受賞し、高い評価を得ました。特にラストシーンの「まだ最高裁がある！」というセリフは、多くの人々に記憶され、冤罪と正義を巡る重要なメッセージとして語り継がれています。本作は、刑事裁判における不条理を描き出し、今なお多くの人々の心に残り続けています。

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