真根子命

真根子命（まねこのみこと）

真根子命は、古墳時代に活躍したとされる豪族・壱岐直の祖です。『日本書紀』には「壱伎直祖真根子（いきのあたいがおや まねこ）」と記されています。

『日本書紀』における記述

『日本書紀』応神天皇9年4月条には、真根子命に関する興味深い逸話が記録されています。

天皇の命により武内宿禰が筑紫へ派遣された際、弟の甘美内宿禰は兄を陥れようと天皇に讒言しました。これを受け、天皇は武内宿禰を殺害するために使いを派遣します。

しかし、武内宿禰と容姿がよく似ていた真根子命は、武内宿禰の身代わりとして自ら命を絶ちました。その後、武内宿禰は朝廷に参内し、天皇に真実を弁明。甘美内宿禰との探湯による対決を経て、無実を証明したとされています。

この物語は、真根子命の忠誠心と自己犠牲の精神を際立たせています。

「松尾社家系図」における記述

一方、「松尾社家系図（歌荒洲田卜部伊伎氏本系帳）」には、異なる伝承が記されています。

それによれば、真根子命は神功皇后の三韓征伐の際に、父である雷大臣命に従って三韓へ渡ったとされています。征伐後、真根子命は壱岐島に留まり、その子孫は中臣氏、卜部氏、または地名にちなんで壱岐氏を称したと伝えられています。

この記述は、真根子命が武人としての側面も持ち合わせていたことを示唆しています。

系譜

「松尾社家系図（歌荒洲田卜部伊伎氏本系帳）」によると、真根子命の父は雷大臣命、母は武内宿禰の妹とされています。

真根子命を祀る神社

真根子命は、以下の神社で祀られています。

伏尸神社（佐賀県武雄市若木町）：真根子命の埋葬地とされています。
壱岐神社（福岡県福岡市西区下山門）：壱岐氏の祖神として祀られています。
真根子神社（福岡県福岡市西区姪浜）：真根子命を主祭神として祀っています。
織幡神社（福岡県宗像市鐘崎）：海上の守護神として祀られています。

これらの神社は、真根子命の功績を讃え、その霊を慰めるために建立されたと考えられています。

まとめ

真根子命は、『日本書紀』と「松尾社家系図」という異なる史料において、異なる側面から語られています。

『日本書紀』では、武内宿禰の身代わりとなった忠臣としての側面が強調されています。一方、「松尾社家系図」では、神功皇后の三韓征伐に従軍した武人としての側面が描かれています。また、壱岐氏、中臣氏、卜部氏との関連も示唆されています。

これらの伝承は、真根子命が当時の社会において重要な役割を果たしていたことを物語っています。現代においても、真根子命は各地の神社で祀られており、その名が後世に伝えられています。

参考文献

「壱岐直真根子」『日本古代氏族人名辞典 普及版』吉川弘文館、2010年。ISBN 978-4642014588。

関連項目

卜部
* 壱岐島

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