壱岐氏

壱岐氏（いきうじ）は、古代日本の氏族で、壱岐国壱岐郡を本貫とします。この氏族は、伊岐氏、伊吉氏、壱伎氏など、複数の表記で記録されています。

壱岐氏には、大きく分けて二つの系統が存在します。一つは神別氏族、もう一つは渡来人系氏族です。

神別氏族

神別氏族は、古代には県主、後に島造（国造に相当）に任じられた一族です。彼らは姓を直と称し、後に公を名乗りました。『新撰姓氏録』によれば、天児屋命の九世子孫である中臣烏賊津（雷大臣）の子孫とされています。この系統は、中臣氏とのつながりが深く、松尾社の卜部氏の一族であるという見方もあります。また、壱岐島造の壱岐氏と中臣氏は、天武天皇の頃に擬制的な血縁関係を持ったとする説も存在し、その系譜については複数の説があります。

諸蕃氏族

一方、渡来人系氏族は、唐人の揚擁の子孫と称しています。彼らは姓を史と称し、後に連を名乗りました。『日本書紀』によると、天武天皇12年（683年）に連姓を与えられたとされています。この系統の氏族は、主に外交面で活躍し、遣唐使の一員として伊吉博徳が知られています。また、壬申の乱で活躍した壱伎韓国もこの一族の出身です。

壱岐氏は、古代日本の歴史において重要な役割を果たした氏族であり、神別氏族と渡来人系氏族という異なる背景を持つ二つの系統が共存していました。それぞれの系統が、政治や外交の場で活躍し、その足跡を歴史に残しています。

参考文献

北村文治「壱岐氏」（『国史大辞典 1』吉川弘文館、1979年）
佐伯有清「壱岐氏」（『日本史大事典 1』平凡社、1992年）
鈴木靖民「壱岐国造」（『平安時代史事典』角川書店、1994年）
梅田義彦「伊岐氏」（『平安時代史事典』角川書店、1994年）
* 五島邦治「壱岐直」（『平安時代史事典』角川書店、1994年）

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