真理、時間、歴史

『真理、時間、歴史』

フランシスコ・デ・ゴヤが1797年から1800年にかけて制作した油彩画『真理、時間、歴史』は、スペインロマン主義の傑作として知られ、寓意画の一環として美術史にその名を刻んでいます。この作品は、当時のスペイン宰相であった平和公マヌエル・デ・ゴドイのために依頼されたとされ、同時期に制作された『詩』と共にストックホルムのスウェーデン国立美術館に所蔵されています。

この作品には、三人の擬人像が描かれており、それぞれが「歴史」、「時間」、そして「真理」を象徴しています。中央には「歴史」を表す裸の女性像が岩の上に座っており、白い羽根ペンと開かれた書物を持っています。彼女は「人間を不滅にする」という伝統的な役割を果たす「歴史」を象徴し、過去を振り返る姿勢が示されています。左後方には「時間」を象徴するハト髭の男性が描かれており、砂時計を持ちながら上を向いています。その姿は、未来への希求を表しているかのようです。画面の右側にはこの「時間」の背中に大きな翼が広がっており、その広がりは「真理」が彼の後ろに立っていることを強調しています。

特に「真理」とされる女性像は、胸を少し露出させて鑑賞者に向かっており、王笏と灰色の小さな書物をそれぞれ手に持っている姿が非常に印象的です。背景は対照的な二つの情景で彩られており、左側は明るく、右側は暗く描かれ、寓意としての意味を一層深めています。

この作品の制作年代は1797年から1812年にかけてとされますが、最も広く受け入れられているのは1804年から1808年の間です。ゴヤがこの作品の初期の構想を持っていたのは1797年に遡り、その際に用いた赤いチョークとウォッシュの技法による素描が残されています。また、その素描には「時間」と「真理」が描かれていますが、最終的な作品では「歴史」が加わっていることから、彼の構想が進化したことが伺えます。

美術の歴史家たちは、この作品に対する多様な解釈を提唱しています。特にマルティン・S・ソリアは、この絵が1797年頃に制作されたものであるとし、ゴヤが古典的な寓意像の影響を受けつつも独自の視点を持って表現していると考えています。また、ソリアは「時間」が持つ砂時計が、スペインが直面していた歴史的な変革を示唆するものであると注目しています。

一方で、エレノア・アクソン・セイアーは1812年のスペイン憲法に関連づけてこの作品を解釈し、三人目の擬人像を「法律」として捉える見解を示しています。これにより、作品全体が新しい時代の到来を祝う象徴としても理解されるべきであるとしています。

絵画の来歴については、完成当初、マヌエル・デ・ゴドイをはじめとする貴族のコレクションに存在したとされますが、確かな情報は1867年まで遡ります。その後、様々な所有者の手を経て、現在のスウェーデン国立美術館に至ります。

この作品は、単なる美術作品としての価値に留まらず、当時のスペインの社会情勢や政治的背景を読み解く一助となるものです。そのため、芸術愛好家や歴史家たちの間で重要な役割を果たし続けています。

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