真空フィードスルー

真空フィードスルーは、真空状態を保った機器内部へ、電気信号、物理的な運動、流体などを輸送・制御するために、真空壁に取り付けられる特殊な部品です。真空と大気を隔て、様々な機能を真空環境内で実現するために不可欠です。

フィードスルーの種類

フィードスルーは、その機能に応じていくつかの種類に分類できます。

電気フィードスルー

電気フィードスルーは、真空内部へ電気を送るためのもので、大きく2つに分けられます。

電源フィードスルー: 機器に電力を供給するためのフィードスルーです。高い電圧と電流に耐える必要があり、絶縁にはセラミックなどの材料が用いられます。
機器フィードスルー: 機器との信号伝達のためのフィードスルーです。BNC、SMA、SHV、N型など、信号の種類に応じたコネクタが使用されます。

絶縁には、アルミナなどのセラミックが使用され、ろう付けやコバール接続などで真空壁に取り付けられます。高電圧下では、フィードスルー全体を絶縁体で覆う必要があり、大電流に対しては太い導体が用いられます。

モーション・フィードスルー

モーション・フィードスルーは、真空内部のサンプルや光学機器などを動かすために用いられます。

直線運動: 蛇腹で真空と隔離されたシャフトを動かすことで、直線的な動きを伝えます。
回転運動: 回転運動を伝えるためのフィードスルーには、Oリング、オイルシール、ウィルソンシール、磁性流体シール、マグネットカップリング、溶接ベローズなどがあります。それぞれ特性が異なり、要求される真空度や運動精度に応じて使い分けられます。

低い真空度であれば、Oリングなどで対応できますが、高い真空度が求められる場合は専用の部品で構成されたモーションフィードスルーが必要です。

流体フィードスルー

流体フィードスルーは、ガスや液体を真空環境へ輸送するために使用されます。常温のガスや液体は、溶接やOリングシールで接続された管で輸送します。冷却用の液体窒素などを使用する場合は、二重管構造などで断熱機構を設ける必要があります。

まとめ

真空フィードスルーは、真空技術において不可欠な部品であり、電気信号、機械的運動、流体などを真空環境内で制御するために使用されます。適切なフィードスルーを選択し、使用することで、真空装置の性能を最大限に引き出すことができます。

関連項目

シール (工学)
真空
磁性流体シール
真空用材料
真空バルブ
真空フランジ

参考文献

* John H. Moore, Christopher C. Davis, Michael A. Coplan, Sandra C. Greer "Building scientific apparatus - A Practical Guide to Design and Construction", Westview Pr (2002)

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