Oリング

Oリングとは

Oリング（オーリング、英語: O-ring）は、断面が円形の環状をした機械部品で、主にシール（密封）用途に用いられます。押しつぶすことで密閉する「スクイーズタイプ」のシール材であり、一般的にはゴムなどの弾性材料で作られています。Oリングは、装置内部の流体（気体や液体）が外部に漏れるのを防いだり、外部からの異物の侵入を防ぐために不可欠な部品です。

Oリングの原理

Oリングの形状は、断面の太さ（線径）と環の内径で決まります。Oリングは、外筒と内筒のような二つの部品の間にはめ込まれて、その隙間を埋める役割を果たします。部品にはOリングを保持するための溝が設けられ、溝の深さはOリングの太さよりも小さく設計されています。これにより、Oリングが押しつぶされて反発力が生じ、部品同士が密着します。この反発力が密閉の基本原理です。

さらに、Oリングには「セルフシール」という機能があります。Oリングに流体の圧力が加わると、Oリングはより強く押しつぶされ、密着度が増します。これにより、より高い圧力にも耐えられるようになります。

Oリングの使用方法

Oリングは、固定用と運動用の二つの主要な使用方法があります。

固定用: ガスケットとして用いられ、部品同士が相対的に動かない状態で使用されます。例えば、ボルトやリベットで固定された部品の間を密閉する際に使用します。
運動用: パッキンとして用いられ、部品同士が相対運動する箇所で使用されます。例えば、ピストンとシリンダーの間で、Oリングは往復運動しながら密閉を行います。

Oリングは、水、油、燃料、薬品、空気、蒸気など、幅広い流体の密閉に使用されます。材料は、密閉する流体や使用環境に合わせて選択されます。

Oリングの材料

Oリングの材料は、使用環境や目的によって様々です。主な材料として以下のようなものが挙げられます。

ニトリルゴム (NBR): 汎用性が高く、安価で入手しやすい材料です。耐油性に優れますが、耐候性は低いため、日光が当たらない場所での使用が推奨されます。
シリコーンゴム (VMQ): 耐熱性・耐寒性に優れており、広い温度範囲で使用可能です。ただし、機械的強度は低く、運動用途には不向きです。
フッ素ゴム (FKM): 耐薬品性、耐熱性、耐候性に優れており、過酷な環境下での使用に適しています。バイトン(ヴァイトン)やカルレッツといった商品名でも知られています。
ウレタンゴム (AU/EU): 機械的強度に優れており、引張強さ、引裂強さ、耐摩耗性に優れていますが、酸、アルカリ、水に弱いという弱点があります。
ブチルゴム (IIR): 気体透過性が低く、真空用途に適していますが、圧縮永久ひずみが大きいため、一般的な用途には不向きです。
テフロン (PTFE): ゴムのような弾性はありませんが、耐薬品性に優れています。ただし、塑性変形が大きいため、再利用はできません。
金属: ステンレス鋼やニッケル合金などが用いられ、ゴムでは対応できない高温、高圧、高真空などの過酷な環境で使用されます。

Oリングの形状とハウジング

Oリングの形状は、内径と太さによって決定されます。JIS規格では、運動用Oリングの基準寸法が規定されており、内径は2.8mmから399.5mm、太さは1.9mmから8.4mmまでの範囲で規格化されています。

Oリングを設置するための溝は、一般的に四角形ですが、三角溝やあり溝も使用されます。Oリングのシール性能を十分に発揮させるためには、溝の表面粗さを小さくする必要があります。特に運動用の場合には、より高い精度が要求されます。

Oリングのはみ出し

Oリングは、流体の圧力が高すぎたり、隙間が大きすぎると、溝からはみ出してしまい、シール性能が損なわれることがあります。はみ出しを防ぐためには、以下の対策が有効です。

部品の寸法を見直して隙間を減らす
流体の圧力を下げる
Oリングの素材を硬くする
* バックアップリングを使用する

バックアップリング

バックアップリングは、Oリングのはみ出しを防ぐために使用される補助部品です。Oリングと溝の間に装着され、Oリングが溝からはみ出すのを防ぎます。材料には、皮革、テフロン、金属などが用いられます。

Oリングの歴史

Oリングの起源は18世紀にまで遡りますが、現在のOリングの基本的な使い方は、発明家のニールス・クリステンセンによって確立されました。1937年にクリステンセンが特許を取得し、1940年代初頭にはアメリカ空軍の油圧系統のシール方法としてOリングが標準化され、急速に普及しました。

Oリングに関連する事故

Oリングが原因となった重大な事故として、1986年のチャレンジャー号爆発事故が挙げられます。この事故は、固体ロケットブースターのOリングが、設計時の想定を超える低温環境下で使用されたため、シール性能が低下し、爆発につながったとされています。

Oリングの規格

Oリングの形状、材料、溝形状などに関しては、国際規格（ISO）、米国自動車技術者協会規格（SAE）、日本工業規格（JIS）、日本自動車技術会規格（JASO）などで規格が定められています。

まとめ

Oリングは、様々な産業分野で利用されている重要なシール部品です。適切な材料を選定し、正しい設計、適切な使用方法を守ることで、高いシール性能を発揮することができます。

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