真部一男

真部 一男（まなべ かずお）

1952年2月16日に東京都荒川区で生まれた真部一男は、将棋棋士として名を馳せました。彼は加藤治郎名誉九段の門下で、棋士番号111を持っています。将棋界においては、特に若手時代から期待される存在であり、順位戦A級に2期在籍した実績も持っています。

将棋キャリアのスタート

真部は1950年代生まれの棋士の中でも特に優秀な選手とされ、奨励会時代からその才能が際立っていました。彼は山口瞳の著書「血涙十番勝負」にも登場し、「真部一男三段。奨励会実力ナンバーワンは衆目の見るところ」と評価されています。四段になった後は、順位戦で目覚ましい成績を収め、1975年度にはC級1組に昇級。続いてB級2組、B級1組を経て1987年度にはA級八段に昇格します。若手ながら強豪対策にも成功し、特に米長邦雄との対戦では圧倒的に勝ち越していました。

大一番の挑戦

しかし、棋座を背負った大舞台ではなかなかタイトル戦に出場できず、数々の準優勝に終わることもありました。1977年の早指し将棋選手権では決勝で加藤一二三に敗れ、1982年度の棋聖戦でも挑戦者決定戦で敗北するなど、常に頂点との戦いに挑んでいました。特に1982年度の早指し将棋選手権での米長との決勝戦は印象深く、ストレートで勝利して優勝を果たします。

突然の健康問題

将棋界のプリンスとも称された真部だったが、1990年以降は原因不明の体調不良に悩まされ、これが成績の低迷につながりました。2007年11月には病気療養のため全棋戦を休場することが発表され、同年の11月24日には転移性肝腫瘍のために55歳で急逝しました。彼の公式戦通算成績は598勝614敗であり、600勝を目前にした早世が惜しまれます。

幻の妙手

真部の最後の対局である2007年10月30日の順位戦では、体調が著しく悪化し、長考の末に投了しましたが、実はその局面で「△4二角」と呼ばれる妙手を発見していたと弟子の小林が語っています。この手が指されれば、相手は長考に入っていたと後に確認され、真部の才能の片鱗がここでもうかがえました。彼の通夜の際、同じ局面が現れた時には、その局面を知る大内が同じ手を指し、村山がその手に逆転勝利を収めたことが話題となりました。

将棋スタイルと評価

棋風は居飛車から振り飛車へと変遷し、特に手順を尽くした攻防に特長がありました。長手数の将棋においては成績も良好で、直線的な斬り合いを避け、柔軟な発想で脇を固めるスタイルでした。その多彩な戦術や理論に通じた所は、真部自身の著書や連載にも表れています。

人物像

将棋界の中での真部は「将棋界のプリンス」と称され、容姿端麗な姿から多くのファンを魅了しました。日本将棋連盟の理事を務めるほか、将棋についての数々の著書を残し、文筆家としても評価されています。また、彼は牌・酒を愛し、特にタバコ、ウイスキーを好む一面もあり、対局時には必ずタバコを手放さなかったことで知られています。

真部一男の存在は、その棋歴や人格を通じて将棋界に深い影響を与え続け、多くの今の棋士たちにもその名が語り継がれています。

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