早指し将棋選手権

早指し将棋選手権

早指し将棋選手権は、かつてテレビ東京で放送されていた『テレビ将棋対局』内で開催されていた将棋の棋戦です。短い持ち時間で一手ずつ指し進めるスピーディーな対局が特徴でした。本記事では、早指し将棋選手権と合わせて、若手棋士を対象とした早指し新鋭戦についても解説します。

歴史

早指し将棋選手権は、1972年8月に放送を開始しました。これは、東京12チャンネル（現：テレビ東京）で1968年から放送されていた「早碁選手権戦」の流れを汲むものでした。以降、日曜日の早朝番組として「早碁選手権戦」と共に長年にわたり放送され、親しまれました。

対局ルールは原則として1手30秒未満（最終年度は1手20秒未満）という、現代の将棋界においてもかなり短い持ち時間が採用されていました。初期の頃は1年度に2回開催されていましたが、1978年からは年1回の開催となりました。1982年には、30歳以下の棋士などを対象とした早指し新鋭戦が新たにスタートし、若手棋士の育成にも貢献しました。

しかし、2003年3月をもって棋戦および放送は終了しました。

ルール (最終年度)

最終年度のルールでは、持ち時間は40手目までは各5分（対局時計を使用）とされていました。それを過ぎると、1手1分未満で指し進める必要がありました。先手は41手目を封じ手とし、対局再開後は1手20秒未満で指しますが、1分単位で各3回の考慮時間を任意に使用できました。

2001年度までの持ち時間は、40手目まで各10分、41手目以降1手30秒未満でした。

早指し新鋭戦

早指し新鋭戦は、成績優秀な30歳以下の棋士15名と女流棋士1名が参加するトーナメント戦でした。若手棋士にとって、実績をアピールする絶好の機会となっていました。

早指し将棋選手権

最終年度（2002年度、第36回）は予選は行われず、以下の基準で選抜された36名によるトーナメントで行われました。

前回ベスト4
新鋭戦決勝進出者2名
タイトル保持者
過去10年の早指し選手権戦優勝者
過去1年のタイトル戦登場者および棋戦優勝者
竜王ランキング戦1組在籍者
順位戦上位者16名
永世称号呼称者
* 1年間の成績優秀者

放送内容

番組は、司会の島田良夫アナウンサーによる「テレビ将棋対局の時間でございます。朝のひと時を早指し将棋でお楽しみください。」というお決まりの台詞で始まりました。

解説は週替わりで棋士が担当し、聞き手は女流棋士が務めました。また、盤側には棋譜読み上げと記録係として女流棋士が配置されていました。

放送時間の制約から、封じ手制が採用されていました。対局者は40手目までを事前に指し、41手目を封じ手としました。放送では、読み上げ係が40手目までの棋譜を読み上げ、対局者が盤上に再現するところから始まりました。その後、記録係が封じ手を開封し、対局が再開されるという流れでした。

終盤は、時間の都合上、読み上げと記録係が再現する盤面の映像に、解説者と聞き手が音声を重ねる形で放送されることが多くありました。

番組の最後には、「今日の一手」というコーナーが設けられ、その日の対局の中から解説者が特に注目すべき一手を選び、その手が指される1手前の局面を大盤で示して、視聴者に次の一手を問うクイズが出題されました。正解者の中から抽選で、棋士の揮毫色紙や棋書、『将棋世界』、『将棋マガジン』などの賞品が贈られました。

記録

早指し将棋選手権の最多優勝者は、大山康晴と米長邦雄の4回です。中原誠・加藤一二三・羽生善治が3回、桐山清澄・有吉道夫・丸山忠久が2回優勝しています。

早指し新鋭戦の最多優勝者は深浦康市の4回です。脇謙二・塚田泰明・森内俊之・佐藤康光がそれぞれ2回優勝しています。

早指し将棋選手権の決勝戦が同門対決となったのは、第20回（1986年度）の田中寅彦 - 中原誠戦のみです。両者とも高柳敏夫門下でした。

早指し将棋選手権の決勝戦が師弟対決となったのは、第2回（1973年度前期）と第12回（1978年度）の大山康晴 - 有吉道夫戦です。第2回は大山が、第12回は有吉が勝利しました。

1993年度には、深浦康市が早指し新鋭戦と早指し将棋選手権の両方を制覇しました。同一年度に両棋戦を全勝で制したのは、深浦康市のみです。

3連覇を達成したのは、早指し新鋭戦での深浦康市のみです。

第32回（1998年度）早指し将棋選手権の決勝（土佐浩司 - 森内俊之）は持将棋指し直しとなり、土佐浩司が勝利しました。これは土佐浩司にとって唯一の棋戦優勝となりました。

谷川浩司九段にとって、早指し将棋選手権は（タイトル戦も含めて）唯一優勝経験のない棋戦でした。

早指し新鋭戦は第16回（1997年度）から女流枠が設けられ、清水市代女流三段が1回戦で久保利明七段に勝利し、2回戦に進出しました。これは、テレビ（早指し）対局の公式戦における女流棋士の対男性棋士初勝利となりました。清水市代女流三段は翌年度も1回戦で中川大輔七段に勝利し、2年連続でベスト8入りを果たしました。

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