瞞天過海

瞞天過海（まんてんかかい）

「瞞天過海」とは、中国の兵法書『兵法三十六計』に挙げられる計略の一つで、「天を瞞（あざむ）きて海を過（わた）る」と訓読されます。これは、大胆な偽装によって相手を欺き、目的を達成する兵法を指します。何食わぬ顔で敵を欺く計略であり、油断を誘う偽装作戦です。

由来

唐の時代、張士貴が高句麗遠征の際、皇帝が船旅を嫌がったため、船上に陸地にある屋敷のような偽装を施し、皇帝を欺いて乗船させ、海を渡ったという故事が由来とされています。

兵法三十六計における記述

『兵法三十六計』の第一計に位置づけられ、「備え周ければ則ち意怠り、常に見れば則ち疑わず。陰は陽の内に在りて、陽の対には在らず。太陽、太陰なり。」と説かれています。これは、「準備が万全であると、人はかえって油断し、日常的に見慣れていることには疑いを抱かなくなる。欺くためには、大胆な偽装を、普段と変わらぬ行動の中に隠しこむことが重要である」という意味です。

つまり、敵を欺くためには、敵の警戒心を解き、油断を誘うことが重要であり、そのためには、普段と変わらぬ行動を装い、敵に見慣れさせる必要があるということです。敵が警戒心を抱かなくなれば、欺くことは容易になります。

具体例：太史慈の故事

三国時代の武将、太史慈の故事は、瞞天過海の具体的な例としてよく知られています。太史慈は、黄巾党に包囲された孔融を救うため、援軍を要請することになりました。しかし、包囲が厳しく、容易に突破できません。

そこで太史慈は、数騎の兵と共に城外へ出て、弓の稽古を始めました。毎日同じように弓の稽古を繰り返すうちに、黄巾軍はそれを日常の光景として見慣れ、警戒心を薄めていきました。そして、ついに黄巾軍の警戒が緩んだ隙を突き、太史慈は包囲を突破し、援軍を呼びに行くことに成功したのです。

この太史慈の例は、日常的な行動を装うことで敵の警戒心を解き、目的を達成するという、瞞天過海の計略を見事に示しています。

まとめ

瞞天過海は、敵の油断を誘い、欺くための計略であり、偽装工作によって敵の目を欺き、目的を達成するために用いられます。この計略は、現代社会においても、ビジネスや交渉の場など、様々な場面で応用できると考えられます。重要なのは、相手の心理を読み、警戒心を解くための巧妙な偽装を施すことであると言えるでしょう。

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