矢上村 (長崎県)

矢上村の歴史と地理

矢上村（やがみむら）は、長崎県西彼杵郡に位置した歴史的な村です。この村は、1955年に近隣の北高来郡古賀村および戸石村と合併し、東長崎町として新たな地名となりました。現在では、長崎市の東長崎地区の西側エリアにあたります。

地理的特性

矢上村は、自然に恵まれた地域であり、多くの山と川に囲まれていました。特に、帆場岳や前岳という山々が村の背後にそびえ、高い自然景観を形成しています。また、八郎川、現川川、中尾川、間ノ瀬川といった河川が村内を流れています。これらの水路は、村の生活と農業において重要な役割を果たしていました。海に面した千々石湾（橘湾）は、村にとって重要な港湾でもありました。

村の歴史

矢上村は、1889年4月1日、町村制施行によって西彼杵郡から独立した村としてスタートを切りました。村の歴史は多くの出来事に彩られており、1922年12月には島原地震が村の番所橋を壊滅させました。また、1930年の台風では村内の65戸が全壊する被害を受けました。1945年8月9日には、長崎市の松山町に投下された原爆によって、村民の2,103人が負傷するという痛ましい歴史が刻まれています。

その後、1955年2月11日に戸石村と古賀村と合併し町制が施行され、西彼杵郡東長崎町が誕生しました。1963年4月20日には、東長崎町が長崎市に編入され、矢上村の自治体としての歴史は消えました。

地名と住民

矢上村は1889年に独立した自治体として発足しましたが、大字はありませんでした。地域内には、現川名（うつつがわ）、田中名、東名、平間名といった地名が存在していました。村のリーダーとして田中槐三と大久保周一が村長を務めました。

交通と流通

矢上村には、当時の長崎本線が長与経由の旧線のみ開通しており、現川駅が設置されていました。しかし、村が存在した時代には市布経由の新しい線はまだ完成していませんでした。加えて、1948年から1960年までの間には、矢上から戸石・小浜を経由して加津佐へ向かう航路が存在していましたが、大正時代までは港が十分に整備されていなかったため、渡船や貨物船の利用は限られていました。

家畜と農業

矢上村は、1885年時点で牛144頭、馬123頭が飼育されていました。また、1932年には馬が33頭飼育され、荷馬車用が27頭、農業支援用が6頭であったことが記録されています。ここからも、村の農業の重要性が伺えます。

名所と施設

村には、矢上村立矢上小学校があり、地域教育の中心となっていました。また、観光名所としては滝ノ観音（平間名）、白砂の海水浴場である東望浜（田中名）も存在し、地域の人々に親しまれていました。

このように矢上村は、地理や歴史的出来事、地域住民の生活が交錯する豊かな文化を持った場所でした。現在はその名を色濃く残していないものの、長崎県の歴史の一部としてその存在は忘れられません。

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