矢吹俊郎

矢吹俊郎：音楽プロデューサー、ギタリスト、キーボーディスト

矢吹俊郎（やぶきとしろう、1961年 12月22日 - ）は、日本の音楽業界で多岐にわたる才能を発揮する音楽プロデューサー、ギタリスト、キーボーディスト、ソングライター、編曲家です。音楽制作会社P.M CREATORSの社長であり、YVS RECORDSの取締役も務めています。

来歴と人物

1980年代後半にはWinkや松本伊代のバンドでギターを担当し、そこでキーボードを務めていた大平勉と共に、1990年代以降の作曲活動を広げていきました。大平勉の紹介で、ギタリストの渡辺格と出会い、後に矢吹がプロデュースする奥井雅美、水樹奈々のバンドのギターを渡辺格に委ねることになります。矢吹は矢沢永吉のファンであり、両者のライブにあるタオルパフォーマンスはこれに影響を受けています。

1995年後半から2001年まで奥井雅美のプロデュースを担当し、2002年からは声優・水樹奈々の音楽プロデューサーを務めました。2022年以降はライブの映像ソフトやパンフレットなどのスタッフクレジットに名前が記載されていません。

大のゴルフ好きであり、水樹奈々のバンドメンバーである渡辺格や坂本竜太を誘ってゴルフの練習へ行く姿が見られます。ライブリハーサルでは、スイングの練習をする姿も見られます。

漫画家のやくみつるに似ていると言われており、本人もそれを気に入っているようです。ライブDVD『NANA MIZUKI LIVE FORMULA at SAITAMA SUPER ARENA』の特典映像「チェリーボーイズ座談会」で自らネタにし、メンバーの笑いを誘っています。

アニメの音楽では、矢吹俊郎、大平勉、本間昭光でVinkを結成し、『万能文化猫娘』や『スレイヤーズ』の音楽、林原めぐみの初期の楽曲のアレンジを担当しました。矢吹俊郎単独ではPlayStationのゲームソフト『超光速グランドール』の音楽、大平勉とのコンビでは『女神天国』の音楽などを手がけています。また、奥井雅美の休養時期にはPAROME名義で『セイバーマリオネット』シリーズの音楽を担当しました。

水樹奈々をプロデュースする前には、ライブなどでコーラス、ダンスで参加した津田和恵をプロデュースしたり、『エイケン萌える音楽室』のキャラクターソングのプロデュースを担当しました。PlayStation 2のゲームソフト『SAKURA 〜雪月華〜』の草薙小雪（堀江由衣）への楽曲提供も行っています。

1999年には自身のスタジオにPro Toolsを導入し、楽曲制作を開始しました。これにより楽曲制作にかかる時間とコストを削減することに成功しました。楽曲は打ち込みサウンドが中心であるものが多いです。

木梨憲武やcherry boysメンバーで構成されるR&Bユニットあじさいにも参加しています。木梨憲武とは中学時代の同級生であり、木梨の友人とは矢吹も仲良くなるという。『木梨ガイド・週末の達人』（フジテレビ）では、渡辺格と共にギター演奏を担当しました。プロデュース業が中心となった現在において、ギターを弾く矢吹の姿が見られる貴重な機会となっています。ライブなどで実際に演奏する際には、矢吹が使用するギターはMusic Manのスティーヴ・ルカサーのシグネチャーモデル（LUKE ルカサーの直筆サイン入り）であることが多いです。

奥井雅美プロデュース時代はラジオ『OVER THE END』（後に『TURNING POINT』に変更）でパーソナリティを務めました。写真などでは怖い印象を受けることもありますが、ラジオなどではとても気さくな一面を見せ、水樹奈々のライブDVDのリハーサル風景でもたびたび登場し、コミカルな動きで場を和ませています。

曲作りに関して

アニメソング中心のプロデュースをしていましたが、積極的にロックを取り入れています。基本的にはAORを大事にしたサウンド作りを行っています。プロデュース全盛期と違い近年は楽曲提供自体がほぼないため、生の楽器を用いてじっくりサウンド製作をする傾向があります。

奥井雅美・水樹奈々プロデュース時のギターソロは矢吹本人に加え、北島健二や渡辺格、若林剛太などが担当していました。矢吹がギターソロを演奏する場合、テクニックよりも楽曲を引き立てるギタープレイをすることが多いです。矢吹が編曲を担当する際のギターとキーボードは、ほぼ本人が演奏しています。ギターソロ以外の間奏では藤陵雅裕のサックスソロプレイなどを用いることが多いです。

バックコーラスを非常に多用しており、サビの部分では厚いコーラスを重ねる傾向があります。コーラスは奥井雅美プロデュース時代は主に副田研二や田中耕作、松岡奈緒美を起用し、水樹奈々プロデュースでは奥井時代に引き続き田中、奥井雅美、近藤美香、高橋聡美などを起用しました。奥井雅美の4thアルバム収録「BIG-3」「Eve」、シングル「Never die」「OVER THE END」では自らもコーラスとして参加しています。

基本的にプロデュース業が中心であるため、楽曲の作詞・作曲・編曲およびライブの演出などがメインですが、ギタリストとしてプロデュースをしていない他のアーティストの楽曲にゲスト参加することもありました。MINMIの『The Perfect Vision』のギターは矢吹俊郎によるものです。

奥井雅美プロデュース

奥井雅美プロデュース時はハイペースでシングルをリリースしました。パターンとしては奥井雅美が作詞・コーラス、矢吹俊郎が作曲・編曲を手掛ける楽曲が多いです。また、奥井雅美のアルバムタイトルで独特のネーミングはプロデューサーである矢吹俊郎が名付けていました。

プロデュースは順調でしたが、Pro Tools導入が奥井雅美と矢吹俊郎の音楽観の相違を決定的にしてしまいました。最終的には半ば喧嘩別れ的に奥井雅美のプロデュースを終了することとなります。その後、奥井雅美と矢吹俊郎が一緒に仕事をし、クレジット表記として二人の名前が登場するのは、2003年にリリースされた水樹奈々の『New Sensation』までありませんでした。

プロデュース末期はスティーヴ・ルカサー、ビリー・シーンなどの海外有名ミュージシャンを起用していました。『TURNING POINT』のレコーディング時に、ルカサー本人にサインをしてもらったギターを今でも愛用しています。

水樹奈々プロデュース

矢吹俊郎が最初に提供した楽曲は、1stアルバム『supersonic girl』収録の「TRANSMIGRATION」でした。この曲では水樹奈々に『ノドから血が出るまで歌え』『全然だめ、ビートが全く感じられない』など厳しい指導をしたことが、水樹奈々の自叙伝『深愛』にて語られています。次のアルバム『MAGIC ATTRACTION』からアルバムプロデュースを矢吹俊郎が担当しました。

水樹奈々プロデュースは2002年にリリースされた『POWER GATE』から本格的にスタートしました。2003年の『still in the groove』までのシングルでは作詞・作曲・編曲を担当しましたが、このシングル以降、2007年の『MASSIVE WONDERS』までシングル表題曲は担当していません。

矢吹俊郎は水樹奈々のコンサートプロデュースも担当しています。リハーサル映像等では、水樹奈々やバンドメンバーに指導している姿が見られます。

楽曲製作では作詞も担当しました。『POWER GATE』や『New Sensation』などの応援ソングから『STAND』等の失恋ソング、『少年』などの回顧ソングまで幅広い作詞センスを見せています。また、水樹奈々出演のアニメ『魔法少女リリカルなのは』の挿入歌『Take a shot』や、その劇場版挿入歌である『Don't be long』など、作品の世界観やキャラクターの心情を意識した作詞も可能としています。

2004年以降、矢吹俊郎の楽曲提供は減ってしまいましたが、ライブプロデュース等で現在も水樹奈々を支えています。幼少時から演歌の歌唱法が身についていた水樹奈々を徹底的に矯正し、ポップス＆ロックの歌唱法を伝授しました。そういった経緯から、水樹奈々は矢吹俊郎を師匠的存在と言っています。

多岐に渡る活躍で日本の音楽界に貢献している人物です。

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