矢島鉄也

矢島 鉄也

日本の保健医療行政に長年携わった厚生労働技官であり、医師、そして医学博士でもある矢島 鉄也（やじま てつや）氏は、中央官庁から地方自治体、さらには関連団体に至るまで、幅広い分野でその専門性と経験を活かしてきました。

経歴概要

東京都に生まれた矢島氏は、1982年に千葉大学医学部を卒業し、厚生省（現厚生労働省）に入省。医師としての基礎を固めるため、千葉県救急医療センターでの臨床研修を経験しました。その後、保健医療行政の道を歩み始め、1988年には福井県厚生部保健予防課長、1997年には鹿児島県保健福祉部長として、地方行政における保健医療サービスの現場に深く関わりました。この間、1999年には母校である千葉大学にて医学博士の学位を取得しています。

厚生労働省でのキャリア

地方勤務を経て中央に戻った矢島氏は、厚生労働省内でキャリアを積んでいきます。2001年には保険局医療課企画官として医療制度の企画立案に携わり、2003年には社会・援護局障害保健福祉部精神保健福祉課長として、精神保健福祉分野の施策推進に尽力しました。さらに2005年には健康局総務課生活習慣病対策室長として、国民病ともいえる生活習慣病対策の指揮を執るなど、国民の健康増進に直結する重要なポストを歴任しました。

保健医療行政の中枢において、その手腕を発揮した矢島氏は、2007年に大臣官房厚生科学課長に就任し、厚生科学研究の推進を担いました。2009年には国立がんセンター運営局長として、がん研究・医療の中核を支える機関の運営に貢献。そして2010年には、省内の技術系職員のトップポストの一つである大臣官房技術総括審議官に就任し、専門技術的な見地から政策立案・評価を統括する役割を担いました。

特に重要なポストとしては、2012年から務めた厚生労働省健康局長が挙げられます。この任期中、彼は「第二次健康日本21」の推進に深く関与しました。これは、国民一人ひとりが健やかで心豊かに生活できる活力ある社会の実現を目指す、日本の健康増進施策の根幹をなす計画であり、その舵取り役として大きな責任を担いました。

退官後の活動

2013年に厚生労働省を退官した後も、矢島氏はその豊富な知識と経験を社会に還元し続けています。退官と同時に千葉大学の客員教授に就任し、後進の指導にあたりました。2014年からは千葉県の病院事業管理者として、県内の病院事業の経営・運営を統括し、地域医療の質の向上に貢献しました。2020年には厚生労働省参与として再び中央の行政に関与するとともに、日本健康・栄養食品協会の理事長に就任。健康食品や栄養分野の健全な発展と普及啓発に尽力するなど、多方面で活躍しています。

矢島氏は医師としての臨床経験、地方行政での現場感覚、そして中央省庁での政策立案・実行能力を兼ね備え、日本の保健医療および福祉分野の発展に多大な貢献を果たしてきた人物と言えます。そのキャリアは、公衆衛生、医療政策、地域医療、健康増進といった幅広い領域にわたる専門性の深さを示しています。

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