矢崎山遺跡

矢崎山遺跡の概要

矢崎山遺跡（やざきやまいせき）は、神奈川県横浜市都筑区荏田南町に位置し、縄文時代から中世にかけての多様な遺構を含む重要な遺跡です。特に古墳時代の大規模な集落が中心的な特徴とされています。この遺跡は、港北ニュータウン遺跡群の一部として、地域の文化的な歴史を理解するための重要な手がかりを提供しています。

立地と規模

現在の都筑区は、もともと多摩丘陵の一角であり、里山の風景が広がっていました。矢崎山遺跡は、早渕川の南岸に面した標高25～50メートルの台地上に位置し、推定面積は約60,000平方メートルにも及びます。この広大な範囲は、古代の人々による様々な生活の痕跡を今に伝えています。

調査の背景

1965年から始まった港北ニュータウンの開発に伴い、この地域は大規模な都市計画の対象となりました。この開発によって、269か所の埋蔵文化財が埋蔵されていることが知られることとなり、その多くは約20年にわたる発掘調査によって明らかになりました。矢崎山遺跡は、その調査の一環として1976年から1977年にかけて発掘され、豊かな考古学的成果が得られました。また2003年には、隣接する矢崎山西遺跡の調査も行われました。

調査結果と発見

矢崎山遺跡の調査では、多様な時代の遺構が発見されました。具体的には、縄文時代早期の落とし穴や弥生時代中期の墓、古墳時代中期から後期にかけての竪穴建物が100軒、掘立柱建物や祭祀に関連する遺構も含まれています。特に注目すべきは、古墳時代中期における大規模な集落の存在であり、これは他の地域と比べても特異な傾向を示しています。また、当時導入されたばかりの竈が多くの竪穴建物に確認され、先進的な文化の流入を示唆しています。

また、矢崎山集落の南には、方墳とされる矢崎山古墳が存在し、集落の盟主的存在であった可能性が高いとされています。この古墳は、集落の最盛期を象徴するものと考えられています。

変遷と衰退

しかし、6世紀中頃以降は、集落の中心地が矢崎山遺跡から矢崎山西遺跡に移動し、徐々に建物の数は減少していきました。この背景には、地域内の人口移動や新たな集落の形成があったと考えられています。特に、西1.4kmの位置に長者原遺跡の集落が出現したことから、人々がその新しい集落へ移動した可能性があるとされています。

結論

矢崎山遺跡は、古墳時代の文化を知る上で欠かせない遺跡であり、その調査成果は古代の生活や技術の発展を知る手がかりを提供しています。今後もさらなる研究が期待されるこの遺跡は、神奈川県内における歴史的資産の一つとして大切にされるべきでしょう。

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