矢掛

矢掛（やかげ）

矢掛は、岡山県小田郡矢掛町にある地区で、同町の行政中心地です。かつての小田郡矢掛村にあたり、歴史的な背景と豊かな自然に恵まれた場所です。

概要

矢掛は町のほぼ中央に位置し、小田川の北岸に沿って東西に細長い町並みが形成されています。江戸時代には西国街道の宿場町として繁栄し、その面影を今に伝える景観が魅力です。宿場町を離れると田園風景が広がり、北側から東側にかけては山々に囲まれています。小田川とその支流である美山川が流れ、古くから水害に悩まされてきた地域でもあります。

矢掛には、矢掛神社をはじめとする神社仏閣や、中山城跡、庭瀬藩陣屋跡などの史跡が点在しています。特に、旧矢掛本陣石井家と旧矢掛脇本陣高草家は、当時の姿をそのまま残し、国の重要文化財に指定されています。

かつては米、麦、葉タバコ、ハッカ、イグサ、繭などが主要な産物でしたが、現在は米と手延べ麺が主な特産品となっています。また、近世から続く銘菓「柚餅子（ゆべし）」は、天璋院が愛したことでも知られ、現代でも多くの人に親しまれています。

歴史

古代には『和名抄』に記された小田郡実成郷の一部であり、山陽道の要地として古くから集落が発達しました。南北朝時代には宿駅的集落となり、今川貞世が矢掛に宿泊した記録が残っています。中世末期には毛利氏の勢力下に入り、猿懸山城の庄氏が支配しました。

関ヶ原の戦い後、徳川幕府領を経て備中松山藩池田氏の所領となり、寛永12年（1635年）の参勤交代制度の実施に伴い、矢掛は山陽道の宿場町として整備されました。本陣、脇本陣、問屋などが設けられ、宿場町としての役割を担いました。

江戸時代には、宿駅に指定された町域を「失掛町」、その他の農村部を「矢掛村」と区別していました。明治5年に両者が合併し、明治22年には小林村と合併して新たな矢掛村となり、同29年に町制を施行しました。昭和29年には周辺の村々と合併し、現在の矢掛町が誕生しました。

地名の由来

矢掛の地名は、かつて「屋影」や「屋蔭」と表記されていました。今川貞世の『道ゆきぶり』には「屋蔭」という地名で登場し、歌が詠まれています。「矢掛」という表記は、この歌に由来するという説がありますが、詳細は不明です。

地勢

矢掛は、高妻山や茶臼山などの山々に囲まれ、小田川、美山川、和田川などの河川が流れています。内神池、国司池、亀島池などの池も点在し、豊かな自然環境が特徴です。

行事

矢掛では、年間を通して様々な行事が開催されます。2月の本陣マラソン、3月の大仙院祭礼や流しびな、4月の吉祥寺かいどう祭り、7月の矢掛土曜夜市、11月の矢掛宿場祭り（大名行列）など、地域に根ざしたイベントが盛んです。

主要施設

矢掛町には、矢掛町役場、矢掛公民館、矢掛町立図書館、やかげ文化センターなどの公的施設や文化施設があります。また、矢掛小学校、矢掛中学校、矢掛高等学校などの教育施設、矢掛町国民健康保険病院などの医療施設も充実しています。

交通

矢掛へのアクセスは、井原鉄道井原線の矢掛駅が最寄り駅です。国道486号や岡山県道35号、64号などの道路も整備されており、車でのアクセスも便利です。かつての西国街道（近世山陽道）も通り、歴史を感じながらの散策も楽しめます。

矢掛は、歴史的な町並みと豊かな自然が調和した魅力的な場所です。ぜひ一度訪れてみてください。

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