矢羽勝幸

矢羽 勝幸（やば かつゆき）

日本の俳文学界において、近世中期から後期にかけての俳諧、とりわけ俳人小林一茶と加舎白雄の研究分野で傑出した業績を残した研究者です。特に小林一茶に関する研究においては、その第一人者として広く認められています。

矢羽勝幸氏は、1945年3月25日に現在の長野県東御市にあたる地域で生を受けました。長野県屋代高等学校を経て、1969年に國學院大學文学部日本文学科を卒業し、文学の道を志します。大学卒業後、長野県内の高等学校で教壇に立ち、教育者としてのキャリアをスタートさせました。

その後、研究者としての活動も本格化させ、1985年に国立長野高等専門学校の専任講師となり、助教授へと昇任します。さらに1988年には上田女子短期大学に移り、助教授、そして教授を務めました。1992年からは二松学舎大学文学部に助教授として迎えられ、1994年には教授に就任。長年にわたり後進の指導と研究活動に従事し、2015年に同大学を定年退任した後は、客員教授としてその学識を伝え続けています。この間、母校である國學院大學や立教大学など、様々な大学で講師としても教鞭を執っています。

氏の最も重要な業績の一つに、『一茶全集』の共編纂が挙げられます。1978年に丸山一彦氏らと共に信濃毎日新聞社から刊行されたこの全集は、俳文学研究における基礎資料として極めて高い価値を持ち、この功績により同年に文部大臣賞および毎日出版文化賞を受賞しました。これは研究者としての地位を確固たるものとする大きな出来事でした。

その後も研究活動は活発に行われ、2013年には二村博氏との共著『鴛鴦俳人 恒丸と素月』で文部科学大臣賞を受賞するなど、その学術的貢献は多方面から評価されています。同年には出身地である長野県上田市より文化功労表彰を受け、地域文化への貢献も讃えられました。さらに2018年には、長年にわたる研究と文化活動の功績が認められ、信毎賞を受賞しています。

研究だけでなく、矢羽氏は俳句の実作者としての顔も持ち合わせています。著名な俳人である石原八束氏に師事し、俳句創作の指導を受けました。その創作活動の成果として、句集『曲川集』（私家版）を刊行しています。

著書としては、『信濃の一茶――化政期の地方文化』（中公新書）、『一茶大事典』（大修館書店）、『俳人加舎白雄伝』（郷土出版社）など、一茶や白雄、そして故郷信濃の俳諧に関する研究書を多数刊行しています。また、『加舎白雄全集』や『一茶全集』といった重要な作品の編纂・校訂にも深く関わり、近世俳諧研究の基礎資料整備に大きく貢献しました。これらの活動を通じて、矢羽勝幸氏は日本の近世俳諧研究、特に信濃ゆかりの俳人の実像解明とその文学的評価の確立に、計り知れない貢献を果たしています。

（上記の記述は、公開情報に基づいています。）

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