矢部良明

矢部良明：陶磁器と茶の湯の歴史を彩る研究者

矢部良明氏(1943年-)は、日本の陶磁器と茶道に関する歴史研究において、その深い知識と多角的な視点から第一人者として広く知られています。神奈川県で生まれ育ち、東北大学文学部美術史学科を卒業後、東京国立博物館に入職。同博物館において長年にわたり研究と業務に携わり、工芸課長を歴任しました。その間、日本の陶磁器と茶の湯の歴史、文化に関する研究を精力的に続けました。

氏の研究活動は、膨大な数の著作、論文、そして編著書に表れています。著書には、中国陶磁器の歴史を網羅した『中国陶磁の八千年 乱世の峻厳美・泰平の優美』や、日本の陶磁器の歴史を概観する『日本やきもの史入門』『日本陶磁の一万二千年 渡来の技 独創の美』など、初心者から専門家まで幅広い読者層を対象とした入門書から高度な専門書までが含まれています。また、千利休や織部、武野紹鷗といった茶道界の重要人物に焦点を当てた著作も多く、茶の湯文化への深い造詣を示しています。例えば、『千利休の創意 冷・凍・寂・枯からの飛躍』では、千利休の革新的な茶の湯へのアプローチを詳細に分析し、その芸術性と独自性を明らかにしています。さらに、『古田織部 桃山文化を演出する』では、桃山時代の茶の湯文化における織部の貢献を様々な角度から解き明かしています。

氏の著作は、単なる歴史的事実の羅列にとどまらず、それぞれの時代の社会状況や文化背景を踏まえ、陶磁器や茶の湯がどのように発展し、人々の生活に影響を与えてきたかを丁寧に解説しています。その読みやすさと分かりやすさは、専門外の読者にも高く評価されています。

編著書においても、その豊富な知識と経験を活かした貢献が見られます。『やきものの鑑賞基礎知識』は陶磁器鑑賞の入門書として、初心者にも分かりやすく陶磁器の魅力を伝えています。また、『角川日本陶磁大辞典』の編纂にも参加し、日本の陶磁器研究に大きな足跡を残しました。

矢部氏の業績は、学術的な論文にも表れています。CiNiiなどのデータベースで検索することで、氏の研究論文のリストを確認することができます。これらの論文は、日本の陶磁器史研究に新たな知見を提供し、多くの研究者や愛好家に影響を与えてきました。

2011年には、茶道界において権威ある賞である裏千家から第9回茶道文化賞を受賞。これは、氏の長年にわたる研究活動と、日本の茶道文化への貢献が高く評価された証と言えるでしょう。

東京国立博物館での勤務経験と、数々の著作や論文、そして茶道文化賞受賞という輝かしい実績は、矢部良明氏が日本の陶磁器と茶の湯の歴史研究において、どれほど重要な役割を果たしてきたかを物語っています。その功績は、今後も日本の文化遺産の研究と継承に大きく貢献していくことでしょう。

もう一度検索